透徹した解釈の「第九」に期待
毎年この時期になると、今年の年末はどの「第九」に足を運ぼうかと迷う。本来、年末とはなんの関係もない作品だが、この偉大な交響曲が師走の年中行事として演奏されるおかげで、私たちは毎年、好きなオーケストラを選んで「第九」を聴くことができる。僥倖というほかない。
今年特に目をひくのは、読売日本交響楽団の「第九」を指揮するデニス・ラッセル・デイヴィス。古典から現代作品まで、きわめて幅広いレパートリーを誇るアメリカ出身の名匠だ。もともと近現代作品を得意とするイメージの強い指揮者だが、近年の録音ではリンツ・ブルックナー管弦楽団とのブルックナー交響曲全集や、シュトゥットガルト室内管弦楽団とのハイドン交響曲全集などで話題を呼んだ。ベートーヴェンの「第九」に対しては、どんなアプローチで臨むのか、大いに興味がわく。
声楽陣もこの公演の大きな魅力となっている。木下美穂子、林美智子、高橋淳、与那城敬の日本を代表する独唱者たちに加えて、定評ある新国立劇場合唱団が合唱を務める。なんといっても第4楽章の「歓喜の歌」は「第九」の聴きどころだが、クォリティの高い合唱を聴きたいのであれば新国立劇場合唱団にまさる選択肢はない。オペラにおいても、コンサートにおいても、常に最高水準の歌唱を聴かせてくれる。一年の締めくくりに、美しいハーモニーに浸りたい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2013年11月号から)
★12月18日(水)、19日(木)・サントリーホール
20日(金)、21日(土)・東京芸術劇場
23日(月・祝)・横浜みなとみらいホール
25日(水)・東京オペラシティコンサートホール
問 読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp