【CD】合唱音楽の夕べ vol.7 新実徳英の合唱世界Ⅱ 二つの愛の物語/藤井宏樹&合唱団樹の会

 『伊勢物語』の「梓弓」と「筒井筒」を音楽化=合唱劇化する、という新実徳英ならではの着眼点。これが結果として非常に濃密な情感を現出させることに成功している。2つの挿話にそれぞれ登場する男女(2組計4名)が主人公であるが、ある意味で要たる合唱は本作のために和合亮一が書き下ろした創作=男女間の「詩」であり、これはギリシャ劇における「コロス」的な役割でもありながらそれを超越して情念を自在に拡張する。これら主役と合唱の関係性に注目して聴かれたいが、沈鬱な「あずさ弓」、軽快さを伴いながらもいじましい哀切さが覆う「筒井づつ」。見事なものだ。演奏も万全。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年7月号より)

【information】
CD『合唱音楽の夕べ vol.7 新実徳英の合唱世界Ⅱ 二つの愛の物語/藤井宏樹&合唱団樹の会』

新実徳英:合唱劇「二つの愛の物語」

藤井宏樹(指揮)
金沢青児 中村響(以上テノール)
荻原美城 塙亜寿美(以上ソプラノ)
浅井道子(ピアノ)
加藤亜希子(クラリネット)
ヨコミゾ ヒロユキ(チェロ)
合唱団樹の会

日本アコースティックレコーズ
NARC-2158 ¥2500+税