アーティストメッセージ(8)〜川口成彦(ピアノ、フォルテピアノ)

この春、川口は1842年製プレイエルを使用した『ショパン:夜想曲&小品集』(ACOUSTIC REVIVE)をリリースした。写真は昨年6月の録音時のもの。
 先日NHKで流れていたクラシック音楽番組を見ていて、演奏家たちの音楽に全力を注ぐ姿、そして奏でられる美しい音楽に触れて胸が熱くなりました。「美しい音楽に会いに演奏会に行きたい!生で聴きたい!」という想いが溢れました。自分にとって音楽は演奏することも聴くことも含めて当たり前の「日常」となっていましたが、そんな「日常」の中に隠れていた子どもの頃のような音楽への憧れ、恋焦がれる感情がニコニコと再び私に微笑んでくれました。それは今回とても嬉しいことでした。

 ウイルス蔓延の初期段階では続けざまに演奏会がキャンセルになる状況に気持ちが沈んだこともありました。チケットを購入されて楽しみにして下さっていた皆様、演奏会に向けて多くの時間とエネルギー、情熱を注いで下さった公演主催者および関係者の皆様、様々な方々の想いを考えるとため息しか出ませんでした。この場を借りて日頃の感謝の気持ちをお伝えしたい思いでいっぱいです。

 そして、今はこのウイルスがもたらしうる経済の危機的状況も心配でなりません。ウイルスの終焉の先にある「新しい世界」を楽しみに、前向きな気持ちで日々過ごせたら良いですが、「ウイルスの長期化」という言葉が専門家の口から出るようになった最近では、経済破綻とともに芸術文化が衰退してしまうことへの不安も感じるようになりました。

 とにかく一日でも早く、このトンネルから抜け出せることを祈るばかりです。心身ともにお疲れになっている方がたくさんいらっしゃると思います。どうかお身体ご自愛下さい。