【SACD】ブルックナー:交響曲第7番 /上岡敏之&新日本フィル

 上岡敏之の「ブル7」といえば、2007年ヴッパータール響との来日公演ではなんと90分をかけたが、12年を経て、音楽監督を務める新日本フィルとの再演は、多くの人のイメージに近い70分強に。もちろんテンポと演奏の価値は何ら関係ないが、今回実現した細かい彫琢と無理のない穏やかな呼吸感を聴くにつけ、上岡の解釈の深化と自信が20分の差に出ているのもまた確か。長い旋律は緻密に歌いこまれ、安心して作品の世界に浸れる演奏で、前半2楽章は悠然とした美しさ。第1楽章コーダ直前、旋律を覆いつくすティンパニのクレッシェンドは、いま聴くと「痛み」の表現にも感じられて慄然とする。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年5月号より)

【information】
SACD『ブルックナー:交響曲第7番 /上岡敏之&新日本フィル』

ブルックナー:交響曲第7番(ハース版)

上岡敏之(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団

収録:2019年9月、サントリーホール(ライヴ) 他
オクタヴィア・レコード
OVCL-00721 ¥3200+税