百花繚乱とも言いうる有望な若手ヴァイオリニストたちの中でも、その力量の点で最右翼の1人たる本年26歳の逸材、大江馨のデビュー盤はドヴォルザークの協奏曲。年齢に似合わぬ風格ある表情と類稀なる美音を駆使したその演奏は、「若手にしては・・・」などという留保抜きでこの曲の録音史に独自の地位を占める名演奏だと言って差し支えない。上岡敏之&新日本フィルの献身的なサポートも大江のソロをさらに引き立たせる。併録の3曲は人懐っこい節回しと堂々とした骨太の表現が交錯し、このヴァイオリニストの表現の幅広さを示して余りある。ピアノの山中惇史もツボを心得た好演。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年4月号より)
【information】
CD『ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲/大江馨&上岡敏之&新日本フィル』
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリン・ソナチネ、母の教え給いし歌(クライスラー編)、ユモレスク(同)
大江馨(ヴァイオリン)
上岡敏之(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
山中惇史(ピアノ)
収録:2018年3月、すみだトリフォニーホール(ライヴ) 他
オクタヴィア・レコード
OVCL-00718 ¥3000+税