独自の眼差しでフランス音楽を見つめるピアニストが紡ぐ物語
1980年1月11日、フランス留学から帰国して間もない青柳いづみこがデビュー・リサイタルを行なった。それから40年後の同日、「青柳いづみこ 演奏活動40周年記念企画」と銘打ったコンサートが、昼と夜の二部構成で開かれる。青柳はフランス近代芸術の香りを今に伝えるピアニストであると同時に、ドビュッシー研究の第一人者であり、エッセイや人物評伝などを多数出版する文筆家としても活躍を続ける。このコンサートは青柳の演奏家としての節目をマークするものに違いはないが、フランス音楽史をナラティブに描き出そうとする今回のプログラミングには、文筆家としての構築力とファンタジーとを滲ませる。
「昼の部」は独奏。20世紀のサティ、ラヴェル、イベールの作品群の間に、18世紀のクープランとラモーの響きを織り交ぜる。“物語”をテーマとして、女の一生を描く「フォリー・フランセーズ」(クープラン)、「コ・クオの少年時代」(サティ)、「物語」(イベール)などを取り上げる。なお、エキスパートでありながらもドビュッシー作品を入れていないところに、青柳のウィットを感じる。「夜の部」は、近年4手連弾で共演を重ねてきた高橋悠治をゲストに迎え、100年前の1920年に命名されたフランスの「6人組」の連弾作品に光を当てる。プーランクの「連弾ソナタ」やオーリックの「アデュー・ニューヨーク」など軽妙洒脱な作品のほか、高橋のピアノと青柳の朗読でミヨーの「ボヴァリー夫人のアルバム」も披露される。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2020年1月号より)
2020.1/11(土)
【昼の部】ソロ:奏でられる物語 14:00
【夜の部】連弾:6人組誕生! 19:00
浜離宮朝日ホール
問:東京コンサーツ03-3200-9755
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