ベートーヴェンへの刺激的なアプローチに期待
2020年のベートーヴェン・イヤーを前に、ドイツから一足早く使徒がやってくる。マレク・ヤノフスキとケルン放送響だ。
アンサンブルを精緻に鍛え上げ、引き締まった純度の高いサウンドを実現するヤノフスキの実力については、多言は要すまい。今や世界的な名声を博する長老である。ポーランド生まれのこの巨匠、実はドイツの古都ケルンやその近郊で教育を受けている。ケルン放送響との付き合いも長く、今年2月にはマエストロの80歳を祝って、両者が近隣都市を巡る記念ツアーを敢行したというほどの仲なのだ。ケルン放送響も職人気質の心地よいアンサンブルを身上とするオーケストラ。かつて若杉弘が首席指揮者を務め、また宮本文昭をはじめ、日本の著名演奏家が多数在籍してきた(そして、現在も)ことでも知られ、とりわけ私たち日本人にとっても相性の良いオケなのだ。
今回の日本ツアーでは、プログラムの大半をベートーヴェンが占めている。ヤノフスキは現場叩き上げタイプのマエストロだが、楽聖へのアプローチもなかなか刺激的だ。奇を衒うところは一つもないのだが、アレグロはスピーディーで破壊力があり、ゆったりとした楽章でも、旋律をたるませることなく音楽の枠をしっかりと示す。筋の通った職人芸だ。
オペラシティ公演は「田園」と7番を組み合わせた骨太のプログラムを聴かせる。一方、サントリーホールでは「英雄」と「皇帝」。ドイツ国内の80歳記念ツアーに同道したチョ・ソンジンとの共演にも注目だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年11月号より)
2019.11/21(木)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
11/26(火)19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp/
※日本ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。