勢いのある若手たちが濃密に描き出す傑作3篇
ピアノ・トリオはヴァイオリニスト、チェリスト、ピアニストの音楽性および人間性がピタリと合わないと聴きごたえのあるトリオが生まれない難しいジャンルである。ただし、作曲家が魂を込めて作り出した作品が多く、その作品群は音楽家の心をとらえてやまない。そんなトリオを演奏したいと熱望した京都出身のヴァイオリニスト黒川侑が、チェリストの佐藤晴真、ピアニストの阪田知樹に声をかけ、今回のためにトリオを結成した。
黒川は16歳で日本音楽コンクール第1位を獲得、現在はエコール・ノルマル音楽院で研鑽を積みながら国内外のオーケストラと共演を重ねている。佐藤はルトスワフスキ国際チェロ・コンクール、日本音楽コンクールで第1位に輝き、ワルシャワの音楽祭などでも活躍。阪田はフランツ・リスト国際ピアノ・コンクールの覇者。現在はハノーファー音楽演劇大学でさらに音楽に磨きをかけている。3人とも若芽がぐんぐん空に向かって伸びていくような勢いを感じさせ、国際舞台で演奏を展開している若き逸材である。
プログラムはラフマニノフの「悲しみの三重奏曲」第2番、シューベルトのピアノ三重奏曲「ノットゥルノ」、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」。ラフマニノフはチャイコフスキーの死を悼んで書かれた甘美で荘重な曲。シューベルトは歌謡性に富んだ美しい作品。ベートーヴェンはこのジャンルの代表作で名人芸が存分に楽しめる。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2019年10月号より)
2019.10/19(土)14:00 京都府立府民ホール“アルティ”
問:京都府立府民ホール“アルティ” 075-441-1414
http://www.alti.org/