思索のピアニストの指先からこぼれる温かな音色に耳を澄ます
カナダの国宝と称され、数々のレコード賞に輝き、北米での精力的な演奏活動に加え、シャルル=リシャール・アムランというスターを育て上げた巨匠、アンドレ・ラプラント。1978年のチャイコフスキー国際コンクール第2位の経歴を持つ彼は、昨年、約40年ぶりとなった来日公演で、柔らかで美しい音色で多くの人々の心を捉えた。聴衆の願いに応えるかのように2020年もリサイタルを開催する。
プログラムには内省的で洗練されたピアニズムが期待される曲目が並ぶ。バッハ=ブゾーニのアダージョ BWV564の静かな響きで幕を開け、アダージョを第1楽章に配したモーツァルトのソナタK.282が続く。リストの「巡礼の年」より〈3つのペトラルカのソネット〉と〈オーベルマンの谷〉で深いロマンティシズムを提示し、シューベルト最後のソナタD960の柔らかくも緊張感に満ちた世界へといざなう。ラプラントの濃密で温かな音楽に耳を澄ませたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年10月号より)
2020.4/22(水)19:00 浜離宮朝日ホール
問:アイエムシーミュージック03-6907-2535
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