泉 里沙(ヴァイオリン)

国際的なセンスとキャリアを備えた瑞々しい逸材の魅力に触れる

©井村重人
 ロンドン生まれの泉里沙は、イギリス、日本、ウィーンで研鑽を積み、演奏活動を展開する国際派ヴァイオリニスト。現在はイギリスと日本を主な拠点に、幅広い演奏活動にいそしむ。日本では東京藝術大学附属音楽高等学校、同大学、大学院で学んでいるが、その前にはロンドンの王立音楽院のジュニア課程で研鑽を積んでいる。

「ジュニア課程ではソロだけではなくバランスよくアンサンブルやピアノなども学びました。また、室内楽やオーケストラで演奏をする機会もたくさんいただき、ジュニア・オケでは7歳からコンサートマスターとして演奏活動もしてきました。みんな心から音楽を楽しんでいて、私もとても自然体で音楽に向き合っていましたね」

 泉は東京藝大の修士課程に在学中にウィーン・コンセルヴァトリウム大学院修士課程を首席で修了し、ソロ・ディプロマコースでも研鑽を積んで藝大の院に復学して修了した。日本とウィーンではソロを中心に学び、より自分自身の音楽に対峙していったという。

「日本ではコンチェルトをたくさん学び、コンクールに挑戦する機会も増え、自分の技術や音色を深め、音楽をどうつくっていくか常に考える日々でした。ウィーンに行ってからはソナタを弾く機会が多く、時代や作曲家ごとにどういうスタイルで演奏するかを徹底的に学びましたね」

 9月にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団首席チェリストのタマーシュ・ヴァルガ、ウィーン国立音楽大学教授のクリストファー・ヒンターフーバーとともにトリオの公演「華麗なる饗宴」、10月にはピアノの佐藤卓史とリサイタルを行う。これまではヨーロッパでの演奏活動が多かったが、これを機に日本でもさらに演奏活動を積極的に行いたいという。

「今回、本当にすばらしい共演者と日本で演奏できるのでとても嬉しいです。一昨年から草津音楽祭で演奏させていただくようになり、ヴァルガさんやヒンターフーバーさんとはそれがご縁でご一緒するようになりました。佐藤さんはウィーンの留学時代からよく共演し、とても信頼するピアニストです。どちらのコンサートでも、私が大切にしてきたレパートリーを演奏しますので、これまで積み重ねてきたものを皆様にぜひお聴きいただきたいです」

 9月のトリオではブラームス(第1番)にメンデルスゾーン(同)などの大曲、10月のリサイタルではヴィエニャフスキやラヴェルの超絶技巧作品にブラームスやフランクのソナタが並ぶ。“国際派”ヴァイオリニストの幅広い音楽性を、充実のプログラムで存分に堪能して欲しい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2019年9月号より)

〈トリオ〉ウィーン・フィル首席チェリストとの華麗なる饗宴
2019.9/2(月)19:00 王子ホール
問:ロンドンTKアーツ090-6986-0407/londontkarts@yahoo.co.jp

〈リサイタル〉
2019.10/11(金)19:00 東京文化会館(小)
問:カメラータ・トウキョウ03-5790-5560 
http://www.camerata.co.jp/