日本人歌手の最高峰を“いま聴きたい”役で!
「夢の饗宴」── 時に大げさに響くキャッチも、このキャストと曲目ならしっくりくる。例年、日本を代表する歌手たちが歌い、西東京のオペラの風物詩として定着した立川オペラ愛好会主催のガラコンサートだが、今年はとりわけ豪華である。
第1部はヴェルディ《イル・トロヴァトーレ》ハイライト。劇性とエレガンス混在するこのオペラに、これ以上ないキャストだ。リリックな美声で中低音域も充実してきた森谷真理は、レオノーラに必須のアジリタも得意。日本で彼女以上のレオノーラは想像がつかない。純イタリア声の笛田博昭のマンリーコも同様で、圧倒的な響きと高音はそのままに歌唱が洗練され、本場でも笛田以上のマンリーコはなかなか聴けない。森口賢二もイタリアの響きで、フレージングにルーナ伯爵にふさわしい貴族的な品位がある。アズチェーナの谷口睦美は、ジプシー女の錯綜した感情を劇的に表現でき、スタイリッシュでもある。
第2部のグノー《ファウスト》ハイライトもすごい。声が一段と充実し、役柄を掘り下げた繊細な表現も可能な村上敏明のファウスト、やわらかく暖色感のある美声の安藤赴美子のマルグリート。そして日本一のバスといっても過言ではない、悪の美学を表現しうる妻屋秀和のメフィストフェレスに、端正で柔軟な牧野正人のヴァランタン。
この日、これだけのキャストが立川に集結するのは、実際、「夢」のようだ。そのうえピアノが、オペラも歌手の呼吸も知り尽くした河原忠之。まさに夢見心地の時間になるだろう。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2019年9月号より)
2019.9/8(日)14:00 たましんRISURUホール
問:立川オペラ愛好会事務局090-8842-5852(渡辺)