東京オペラシティB→C 田中香織(クラリネット)

聴き手を未聴の地平に誘う

 11月の東京オペラシティの人気企画「B→C」に登場するのは、新進クラリネット奏者の田中香織。2009年の日本音楽コンクール覇者で、現在はスイスのバーゼルと日本を拠点に活躍中だ。J.S.バッハ作品にクラリネットのオリジナル曲がなかったこともあり、今回初めてバッハ作品に取り組むという彼女。披露するのは、音域や調性の相性を考えて選んだソナタ変ホ長調(原曲:フルート・ソナタBWV1031)。これに続くのが、「古典と現代のコントラスト」をテーマにした多彩で濃密な5曲。ドビュッシーの第1狂詩曲やブラームスのソナタ第2番といったクラリネットの傑作、自身がクラリネット奏者でもあるヴィトマンのユーモア溢れる小品など、どれも楽しみだ。だが、何と言っても注目なのが、ヒルボリの協奏曲と、ブーレーズ「二重の影の対話」の2曲。本格的なコレオグラフィー(振付)付きの前者は、彼女が近年追及する“見せる音楽”を。後者は、会場に複数設置されたスピーカーから流れる“エレクトロニクスとの融合”で、それぞれ聴き手を未聴の地平に誘う。尚、今回は田中の地元、北九州でも同一公演がある。
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ2013年11月号から)

★11月2日(土)・北九州市立響ホール(北九州市芸術文化振興財団093-562-3611) ローチケ Lコード87014
5日(火)・東京オペラシティ リサイタルホール(東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999) http://www.operacity.jp