日本フィル・70周年シーズンの開幕は、首席指揮者カーチュン・ウォンとの「第九」マーラー編曲版!

カーチュン・ウォン ©Ayane Sato

 今年創立70周年を迎える日本フィル。そのシーズン幕開けを飾るのは、首席指揮者カーチュン・ウォンによるベートーヴェンの「第九」だ。と言っても、ただの「第九」ではない。なんと、マーラー編曲版の「第九」なのだ。なるほど、その手があったかと思わず膝を打ちたくなるような、実に刺激的な公演だ。

 マーラーは「第九」を指揮するにあたり、自ら編曲を施した。編成を拡大し、木管や金管を補強してオーケストレーションに厚みを加えている。より力強く、より重厚に、より壮大に。これは決して奇をてらった改作ではなかったはずである。過去の偉大な作品を、同時代の聴衆に最良の形で届けるにはどうしたらよいか。そんなマーラーの真摯な思いが背景にあったのだろう。原典尊重の考え方を自明のこととして受け入れている現代の私たちにとって、この編曲は19世紀末のベートーヴェン像のひとつを伝えるものとして、多くの発見や驚きをもたらしてくれることだろう。もちろん、マーラー版であっても「第九」が博愛と平等の精神を讃えた作品であることに変わりない。カーチュン・ウォンがどのような熱い音のドラマを生み出してくれるのか、大いに期待が高まる。

 独唱には森谷真理(ソプラノ)、林美智子(メゾソプラノ)、村上公太(テノール)、大西宇宙(バリトン)が顔をそろえ、合唱は晋友会合唱団。70周年の節目にふさわしく、「歓喜の歌」がいっそう晴れやかに響き渡ることだろう。

文:飯尾洋一

(ぶらあぼ2026年4月号より)

カーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 第779回 東京定期演奏会 
2026.4/10(金)19:00、4/11(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp


飯尾洋一 Yoichi Iio

音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 https://www.classicajapan.com/wn/