【CD】ディプティク〜フランス・オルガン音楽、再興の時〜/小川有紀

 小川有紀はフランス19世紀中期のオルガン音楽の研究者でもあるが、ここでは対象に演奏家として肉薄している。当時、革命によって破壊されたオルガンが再建される一方、近代化の中で教会の社会的意味も変化していた。世俗に向けて扉を開く者、屈折した思いを揺れ動く調やクロマティックに託した者…時代に応答したオルガニストたちの試みは、フランクという巨人へと流れ込み、20世紀以降の繁栄を導いていく。小川が時代と作曲家の精神に深く沈潜し掴んだダイナミズムを、那須野が原ハーモニーホールのオルガンの豊穣なサウンドが鮮明に伝える。知られざる歴史が浮かび上がるエキサイティングな一枚だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年8月号より)

【information】
CD『ディプティク〜フランス・オルガン音楽、再興の時〜/小川有紀』

フランク:幻想曲 ハ長調、「前奏曲、フーガと変奏曲」、祈り、コラール第1番/ボエリ:小品 ロ短調、同 ハ短調/ブノワ:歌え、舌よの旋律によるフーガ/ルフェビュール=ヴェリ:マルシュ/フェシー:フォンのストップで/ショヴェ:小品 ホ長調

小川有紀(オルガン)

ナミ・レコード
WWCC-7899 ¥2500+税