北ドイツ・オルガン楽派の中心人物で、バッハに多大な影響を与えた先達ブクステフーデ。世界各地の銘器で録音を重ねている松居直美は、その佳品の録音にあたり、16世紀に製作された、コペンハーゲン郊外のロスキレ大聖堂のオルガンを選んだ。この楽器は一時、拡大・近代化が施されたが、1980〜90年代にバロック以前の状態へ修復。奇を衒うことを一切せず、奥行きある音色を生かした真摯な演奏が、対位法に彩られた楽曲の立体感と魅力を露わに。また、ブックレットでは各曲のレジストレーションも明示、コラール曲には本来あるべき歌詞とその対訳が付され、楽曲の深い理解に寄与する。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年8月号より)
【information】
CD『ブクステフーデ:オルガン作品集/松居直美』
ブクステフーデ:プレルーディウム ト短調、パッサカリア ニ短調、平安と歓喜もてわれはいま、テ・デウム、第一旋法のマニフィカト、暁の星のいと美しきかな、甘き喜びに包まれ、トッカータ ヘ長調、いまぞ喜べ 汝らキリストの徒よ 他
松居直美(オルガン)
エルゼ・トルプ(ソプラノ)
カメラータ・トウキョウ
CMCD-15151〜2(2枚組) ¥3000+税