演奏家と邦人作曲家シリーズ2019 in KANSAI


 音楽家たちの互助組織として1965年に発足した日本演奏連盟(演連)は、現在約3200余名の会員を擁する国内最大規模の音楽団体として活動している。連盟創立50周年の2015年には一週間にわたり日本の近代音楽史を俯瞰する意欲的な企画を行ったが、今年は同連盟関西委員会の創立30周年にあたり、それを記念して「演奏家と邦人作曲家シリーズ2019 in KANSAI」が開催される。

 プログラムは演連の豊かな会員層を反映して盛りだくさん。三部構成で、第1部は「ピアノは喜び」と題し戦前の国際派モダニスト大澤壽人から西村朗のデュオ曲を経て、酒井健治の委嘱新作へと至る。第2部「器楽の愉しみ」では西村の無伴奏ヴァイオリン曲で始まり、戦前にベルリン・フィルを指揮したことでも知られる貴志康一の弦楽四重奏曲、そして廣瀬量平のフルート・オーケストラ曲へと編成を拡大していく。第3部は一転して「歌は慈しみ」と題し、ソプラノ、テノール、バリトンの名旋律に耳を傾けた後、清水脩の混声合唱曲で閉じる。

 豊嶋泰嗣、小栗まち絵、周防亮介(以上ヴァイオリン)、上村昇(チェロ)、晴雅彦(バリトン)、阿部裕之(ピアノ)ら、若手からベテランまで関西圏で活躍する音楽家を中心に、壮観な布陣で臨む。実は選ばれている作曲家も吹田出身の貴志、天王寺出身の清水、兵庫出身の大澤、酒井、京都市芸大の教授を長く務めた廣瀬と、関西にゆかりが深い。会場となるいずみホールのレジデント・オーケストラ、いずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督でもある西村も大阪出身だ。戦前から京阪神は関東首都圏とは異なるモダニズム文化を発展させてきたが、これらの楽曲にはその歩みが刻まれている。関西文化の水脈を寿ぎ、今後の発展を願う貴重なコンサートである。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年7月号より)

2019.7/13(土)15:00 大阪/いずみホール
問:日本演奏連盟事務局03-3539-5131 
http://www.jfm.or.jp/