低音のダブルリード楽器で、オーケストラやアンサンブルの枠組みをがっちりと支えるファゴット。でも、単なる“縁の下の力持ち”かと思えば、これがなかなか機動力に富み、優雅で饒舌、そして何よりも魅力的なのだ。ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団で同僚だった、3人の名手で構成される「ファゴット・トリオ・ザルツブルク」。ファゴットのみによる珍しいアンサンブルが、4ヵ所を巡る日本ツアーを敢行、変幻自在な響きの世界をかたちづくる。
メンバーは、モーツァルテウム管首席のフィリップ・トゥッツアー、同管で活躍する黒木綾子に、やはりモーツァルテウム管首席を経て、昨夏からライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の首席を務めるリッカルド・テルツォ。今回のツアーは、モーツァルトやハイドンの「ディヴェルティメント」、ロッシーニのオペラ《セビリアの理髪師》のアリア集など古典作品から、近代アルゼンチンの巨匠ピアソラの「タンゴ組曲」まで、多彩な佳品を詰め込んだ新譜(コジマ録音 7/7発売)のリリース記念を兼ねる。
ステージでは、ファゴット仲間である都響の岡本正之(7/9)、新日本フィルの河村幹子(7/12)の両首席、愛知室内オーケストラの野村和代(7/4, 7/6)と、打楽器の西田尚史も共演。「タンゴ組曲」をはじめ、CDの収録曲も交えて。ハイドン「デュオ ニ長調」(原曲:2台チェロ)、モーツァルトのオペラからの名アリア(ダンツィ編)など二重奏から仏バロックの鬼才コレットによる異色の協奏曲「不死鳥」と、四重奏まで編成も自在に、佳品の数々を披露する。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2019年7月号より)
2019.7/4(木)19:00 名古屋/電文ザ・コンサートホール
7/6(土)14:00 宮崎/メディキット県民文化センターイベントホール
7/9(火)19:00 大阪/ザ・フェニックスホール
7/12(金)19:00 ヤマハホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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