広上淳一(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

イギリスの息吹を感じさせる独創的な選曲で


 あなたがもしイギリスの文化や芸術に関心を抱き、大都市ロンドンや、湖水地方やコッツウォルズをはじめとするカントリーサイドの大自然を愛する人ならば、日本フィルの7月定期演奏会(広上淳一指揮)は幸福な時間を約束してくれることだろう。イギリスの作曲家、ロンドンの栄光を讃えた交響曲などが並ぶラインナップは、まさに英国讃歌といえるプログラムだからだ。

 合唱界ではおなじみのジョン・ラターによる「弦楽のための組曲」は、有名な民謡の旋律などを引用しており、弦楽作品王国であるイギリスらしい優しさに満ちた音楽。約10分ほどのミニ・ピアノ協奏曲であるジェラルド・フィンジの「エクローグ」は、新緑が豊かな自然の中で爽快な風が吹いているような作品(ピアノ:小山実稚恵)。そして名匠カルロス・クライバーがなぜかレパートリーに加えていたジョージ・バターワースの「2つのイギリス田園詩曲」は、まさに穏やかな田園風景を音楽で描いた愛らしい管弦楽曲なのだ。

 これらに加え、大都会であるロンドンの活気を連想させるハイドンの交響曲第104番と、ゲストの小山が主役となるJ.S.バッハのピアノ(チェンバロ)協奏曲第3番を。音符に命を吹き込む広上の指揮、北ヨーロッパの響きを知る日本フィルの演奏で、未知の作曲家と音楽に親しみをおぼえるはず。初夏の暑さが気になる7月中旬、心を和ませてくれるコンサートになることだろう。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2019年6月号より)

第712回 東京定期演奏会 
2019.7/12(金)19:00、7/13(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://www.japanphil.or.jp/