九響創立65周年を記念した定期公演のライヴ録音。2013年から音楽監督を務める小泉のもと、日本を代表する歌手と福岡の合唱団が多数参加して繰り広げた、「千人」の九州初演奏という、モニュメンタルな公演の記録である。だが演奏は祝祭イベントのレベルを超えている。まずは全体の設計が見事。そしてこうした機会特有の熱気や高揚感は十分に保ちながら、細部まで息づいた精緻な音楽が展開される。終始絶叫型の第1部のこまやかな抑揚も光るし、得てして弛緩しがちな第2部前半の雄弁な表現はとりわけ賞賛に値する。終結へ向かう場面は無条件に感動的。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年5月号より)
【Information】
CD『マーラー交響曲第8番「千人の交響曲」/小泉和裕&九響』
マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」
小泉和裕(指揮)
並河寿美 大隅智佳子 吉原圭子(以上ソプラノ) 加納悦子 池田香織(以上アルト) 望月哲也(テノール) 小森輝彦(バリトン) 久保和範(バス) 九響合唱団 他
九州交響楽団
収録:2018年9月、アクロス福岡シンフォニーホール(ライヴ)
フォンテック
FOCD9805 ¥2400+税