高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

充実のコンビで独墺音楽の真価を堪能

 
 いま東京シティ・フィルが好調だ。昨年末の高関健指揮の「第九」、2月の下野竜也指揮のウィーンものなど、楽曲の魅力を的確に表現した誠意溢れる好演が続いている。無類のオーケストラ・ビルダー、高関が常任指揮者に就任して4年、着実に向上を遂げている同楽団のコンサートは、間違いなく足を運ぶ甲斐がある。
 新シーズンの開幕は、高関が指揮するブルックナーの交響曲第1番を軸にしたプログラム。推進力と躍動感に充ちた第1番は、同作曲家のファン以外も必ずや楽しめる音楽だし、ブルックナー指揮者として評価の高い高関と、飯守泰次郎のツィクルスで語法を会得している東京シティ・フィルのアプローチも期待できる。さらに今回はマニアにもたまらない要素がある。それは「1868年リンツ稿、新全集版」での演奏。本作には晩年に大幅改訂されたウィーン稿もあるが、フレッシュなリンツ稿を用いるケースが多い。ただし従来の同稿も2度改訂後の版。それを作曲された当初の姿に戻したのが「新全集版」だ。これは2016年に出版された最新楽譜で、聴き慣れた方は冒頭から驚かされるであろう。なお同版使用の理由を高関に訊くと「一番良いと思うから」との由。ここはブルックナーの最初のインスピレーションをぜひ体感したい。
 前半はモーツァルトの《魔笛》序曲とR.シュトラウスの「4つの最後の歌」。二人の最晩年の境地を映す両傑作も見逃せない。後者のソロは森麻季。日本屈指のスター・ソプラノの清澄かつ表情豊かな歌唱も魅力だし、雄弁な管弦楽との絡みも聴きものとなる。充実した音楽を終始味わえる本公演、要注目だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年4月号より)

第324回 定期演奏会 
2019.4/13(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
http://www.cityphil.jp/