ムジークフェラインにおけるまろやかな音質の録音も含め、柔らかい響きでふっくらと仕上げられた「トゥーランガリラ」。佐渡はオケを決して絶叫させずに響きを溶け合わせてこの曲に美しい落ち着きを与えている。熱狂ではなく覚醒させる演奏とも言えるが、これはユニークだ。「トゥーランガリラ」ももはや完全に古典作品となったことで多様な解釈が出て来る余地があるのだろうが、これは同曲の演奏史でも独自の地位を占める秀演と言い得る。メシアンその人の薫陶を得た2人のソロもさすがに卓越している(オンド・マルトノが極めて明晰に収録されているのが嬉しい)。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2019年3月号より)
【Information】
CD『メシアン:トゥーランガリラ交響曲/佐渡裕&トーンキュンストラー管』
メシアン:トゥーランガリラ交響曲
佐渡裕(指揮)
ロジェ・ムラロ(ピアノ)
ヴァレリー・アールマン=クラヴリー(オンド・マルトノ)
トーンキュンストラー管弦楽団
収録:2017年10月、ウィーン(ライヴ)
エイベックス・クラシックス
AVCL-25979 ¥2000+税