クリスティーヌ・ワレフスカ プレミアム チェロ・リサイタル

チェロ黄金時代の輝きを今に伝え、伝説は伝説のまま生き続ける

©WANG TE-FAN

 アメリカ合衆国のチェロ奏者クリスティーヌ・ワレフスカは1948年ロサンゼルス生まれ。2010年には36年ぶりの来日で話題を呼び、13年にも来日したが、その後は足が遠のいていた。コスモポリタン(世界人)の人生を歩んできたワレフスカ。特に今は亡き夫君の国アルゼンチンで得た音楽のエキスは、情熱的で大らかな演奏スタイルに磨きをかけた。

 巨人パブロ・カザルスや恩師グレゴール・ピアティゴルスキーをして「世界で最も偉大な才能」と言わせしめ、アルゼンチン出身で後にアメリカへ移ったチェロの名手エンニオ・ボロニーニ(1893〜1979)との出会いは、ワレフスカの人生を通じて最大の幸運だった。作曲家でもあったボロニーニは自作の超絶技巧曲にヴァイオリンのパガニーニと同じく、本人だけが演奏する縛りを課していたが、ワレフスカを「真の後継者」と考え、すべての楽譜遺産を託している。

 3月23日、Bunkamuraオーチャードホールでのリサイタルでは、ボロニーニ、ピアソラ、ブラガートとアルゼンチンの作曲家を3人も並べ、18世紀フランスのクープラン、19世紀ポーランドのショパン、20世紀ロシアのプロコフィエフという欧州大陸の多様な文化と時代を背負った作品と対比させる。いずれも、ワレフスカの今日まれな歌の呼吸の深さ、伸縮自在の表現が最大限に発揮される名曲である。長くコンビを組んできた福原彰美のクリスタルなピアノの響きにも、ご注目(耳)を!
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2019年3月号より)

Billboard Classics
クリスティーヌ・ワレフスカ プレミアム チェロ・リサイタル
2019.3/23(土)14:00 Bunkamura オーチャードホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186
http://billboard-cc.com/classics/