異国情緒あふれる港街を音楽で巡るユニークな旅
東京交響楽団の4月定期は、桂冠指揮者・秋山和慶による滅多に聴くことのできないとてもユニークなプログラムだ。メシアン若き頃の作品「讃歌」に続いて、ジョリヴェ「赤道コンチェルト」、レイモンド・ルシュール「マダガスカル狂詩曲」、イベール「寄港地」というもの。かなりのマニアでなければイベール以外は聴いた経験がないのではなかろうか。しかし、メシアン以外はフランス植民地時代の異国情緒溢れる音楽というなかなか心憎い組み合わせで、メシアンと共に20世紀中盤にかけての、色彩豊かな音楽ばかりだ。
「赤道コンチェルト」はアンドレ・ジョリヴェが1950年に完成させたピアノ協奏曲。ジョリヴェはエドガー・ヴァレーズの下で音楽教育を受けただけに、その音楽も強烈で前衛的なエスプリに溢れている。パリ初演では「春の祭典」以来の騒動を引き起こしたという曰く付きの作品だ。が、赤道付近に位置するアフリカ諸国や東洋の熱い情熱が否が応でも伝わって来る。難曲としても知られており、十代ながらクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝し一躍注目を集める藤田真央がどのように挑むかに大いに興味が湧く。ルシュールはタイトル通りマダガスカル島を風景画的に描く。ジョリヴェ同様アフリカがテーマだが、ミヨーのように土俗的なリズムを用いるというよりはイベールにも通じる印象派的な作品で耳にも優しい。そして、「寄港地」第2曲「チュニス―ネフタ」を聴けば異国情緒を満喫できることだろう。
文:山田真一
(ぶらあぼ2019年3月号より)
第669回 定期演奏会
2019.4/21 (日)14:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/