第20回 神奈川国際芸術フェスティバル

オペラ、バレエから雅楽まで。港町を彩る刺激的な芸術祭が今年も!

左から、一柳 慧、佐々木冬彦、上野水香、横山恵子、望月哲也、沼尻竜典

副都心線と東急東横線、みなとみらい線の相互乗り入れにより、東京、埼玉からのアクセスが格段に良くなった神奈川。神奈川県民ホール、KAAT神奈川芸術劇場、神奈川県立音楽堂という県立の3つの文化施設で行われる「神奈川国際芸術フェスティバル」の魅力的な内容を紹介しよう。
9月から11月まで、横浜市内の3つの県立文化施設を会場にして行われる「神奈川国際芸術フェスティバル」。今年で20回目となる。今年のテーマは「音楽—その先へ」。音楽は常に未来を志向し、過去の作品を取り上げる時にも、新しい視点を取り入れようという意図を感じる。そのラインナップはとても多彩。びわ湖ホール他との共同制作となるワーグナーの《ワルキューレ》全3幕上演を初め、バレエ「ジゼル」、パイプオルガン・コンサート、雅楽、「渋さ知らズ大オーケストラ」のパフォーマンスなど、現代のパフォーミング・アートの万華鏡のような内容だ。

生誕200周年を迎えたワーグナーの《ワルキューレ》は上演に全4夜を要す大作「ニーベルングの指環」の第2作目にあたる。管弦楽曲としても有名な「ワルキューレの騎行」はこの作品の第3幕冒頭に登場する。指揮者は沼尻竜典、演出はジョエル・ローウェルス、そしてブリュンヒルデ役にはエヴァ・ヨハンソン、ヴォータン役にはグリア・グリムズレイという世界的に定評のある歌手を迎えるほか、横山恵子、望月哲也ら実力派キャストを揃えての上演だ。「(読み替えではなく)ワーグナーの物語を音楽に忠実に舞台化すること」を目指す、とビデオでメッセージを残した演出のローウェルス。オーケストラは神奈川フィルハーモニー管弦楽団と日本センチュリー交響楽団が合同で参加するが、指揮者の沼尻は「びわ湖ホールとの共同制作ということで、各地元の2つのオーケストラによる特別オケを編成。リハーサルの時間なども効率化でき、演奏をより深められる」と意欲的だ(9月14、15日)。

そして「渋さ知らズ大オーケストラ」の公演。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンへの出演など、常に話題を集めているパフォーマンス集団「渋さ知らズ」だが、KAAT神奈川芸術劇場を舞台に『天幕渋さ船〜龍轍MANDALA〜』という作品を作り出す。劇場内にテントによる異空間を出現させ、スペシャルライヴを行う(10月5、6日)。その前にはライヴに使用する天幕の美術コンペ、ワークショップも開催され、会場近くでの練り歩きも予定されるなど、参加型のパフォーマンスとなる。想像外のパフォーマンスを展開する「渋さ知らズ」だけに、“大オーケストラ”となって何が飛び出るか?
神奈川県立音楽堂は来年で60周年を迎える。そこでは「音楽堂で聴く雅楽」(10月12日)が行われる。古典舞楽とともに佐々木冬彦による箜篌(古代のハープ)と雅楽器による作品「華の宴」が、舞とともに演奏される。華道家・假屋崎省吾の花の展示も楽しみだ。「すでに形の決まってしまった雅楽の世界に新たな息吹を与えてほしい」と、神奈川芸術文化財団の芸術総監督である一柳慧氏も期待を寄せる。

そして県民ホール(小)では、その一柳氏の新作が演奏される「Avanti! 室内アンサンブル」公演(10月5日)もある。フィンランドの先鋭的音楽グループで、夏の音楽祭でも有名なAvanti!から選りすぐりのメンバーが来日してシベリウス、モーツァルト、ノルドグレンなどの作品を披露する。同じく小ホールでは、今井奈緒子によるパイプオルガン・リサイタル(11月23日)も行われる。

毎年話題を集めるバレエ公演では、東京バレエ団が「ジゼル」を上演(10月19日)。ジゼル役を踊る上野水香は11月30日の「ファンタスティック・ガラコンサート2013」にも出演。今回はソチ冬季五輪にちなみ、フィギュアスケートで取り上げられた音楽を中心としたプログラムとなる。毎年完売公演だけに、早めにチェックしよう。

取材・文:片桐卓也/写真:青柳 聡
(ぶらあぼ2013年8月号から)

第20回神奈川国際芸術フェスティバル「音楽─その先へ」
Information

ワーグナー:《ワルキューレ》全3幕
●9月14日(土)、15日(日)両日とも14:00開演
●神奈川県民ホール(大)
指揮:沼尻竜典
演出:ジョエル・ローウェルス
出演(ダブルキャスト:14日/15日の順):福井 敬/望月哲也(ジークムント)、斉木健詞/山下浩司(フンディング)、青山 貴/グリア・グリムズレイ(ヴォータン)、大村博美/橋爪ゆか(ジークリンデ)、横山恵子/エヴァ・ヨハンソン(ブリュンヒルデ)、小山由美/加納悦子(フリッカ)
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団&日本センチュリー交響楽団による合同オーケストラ
料金:全席指定 SS¥15,000 S¥12,000(Sペア¥22,000) A¥9,000
B¥7,000 学生(24歳以下)¥2,000 (C、D売切)

一柳慧プロデュース
Avanti! 室内アンサンブル〜冴えわたるフィンランドの響き
●10月5日(土)15:00開演
●神奈川県民ホール(小)
演目:新作委嘱作品(世界初演)(一柳 慧)/祝祭アンダンテ(シベリウス)/ACEQUIA MADRE(リンドベルイ)/Sunrise at the Fuji mountain(ノルドグレン)ほか
出演:カリ・クリーック(Avanti! 芸術監督/クラリネット)、アンナ=レーナ・ハイコラ(ヴァイオリン)、エミル・ホルムストルム(ピアノ)ほか
料金:全席指定 一般¥3,500 学生(24歳以下)¥2,000

東京バレエ団「ジゼル」全2幕
●10月19日(土)15:00開演
●神奈川県民ホール(大)
出演:上野水香(ジゼル)、木村和夫(アルブレヒト)ほか東京バレエ団
料金:全席指定 S¥10,000(Sペア¥19,000) A¥7,000  B¥5,000 C¥3,000 学生(24歳以下)¥2,000

今井奈緒子 パイプオルガン・リサイタル
CanonーカノンーKanon
●11月23日(土・祝)15:00開演
●神奈川県民ホール(小)
出演:今井奈緒子(オルガン)
演目:前奏曲とフーガ 変ホ長調BWV552/1,2(バッハ)/ペダル・フリューゲルのための練習曲 全6曲 op.56(シューマン)ほか
料金:全席指定 一般¥3,000 ペア¥5,500 学生(24歳以下)¥2,000

ファンタスティック・ガラコンサート2013
煌めきのオペラ&バレエ〜氷上の舞・宴
●11月30日(土)15:00開演
●神奈川県民ホール(大)
出演:松尾葉子(指揮)、別所哲也(司会)、砂川涼子(ソプラノ)、林美智子(メゾ・ソプラノ)、上野水香・高岸直樹(東京バレエ団・プリンシパル)ほか
演目:オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」(プッチーニ)/オペラ《カルメン》より「ハバネラ」(ビゼー)/バレエ『白鳥の湖』より“第2幕アダージョ”(チャイコフスキー)ほか
料金:全席指定 S¥7,000(Sペア¥13,000) A¥5,000 B¥3,000
学生(24歳以下)¥2,000

渋さ知らズ大オーケストラ 『天幕渋さ船〜龍轍MANDALA〜』
●10月5日(土)、6日(日)
●KAAT神奈川芸術劇場(ホール)
出演:渋さ知らズ大オーケストラ、ザ・スターリン246 ほか

音楽堂で聴く雅楽
●10月12日(土)15:00開演
●神奈川県立音楽堂
出演:東京楽所(管絃と舞楽)、佐々木冬彦(箜篌)
花:假屋崎省吾(華道家)
料金:全席指定 一般¥4,500 学生(24歳以下)¥2,000 (特別ペア券売切)

[関連企画] フェスティバルシンポジウム(仮題)
●11月予定
※応募方法・詳細はWEBでご覧ください。

http://www.kanagawa-arts.or.jp/festival

問:チケットかながわ045-662-8866(10:00〜18:00、無休)
http://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/