シャンドル&アダム・ヤボルカイ兄弟

必聴&必見!驚異の超絶技巧デュオ

気象庁が6月25日に発表した3ヵ月予報によると、関東甲信越地方の気温は今年の夏も80パーセントの確率で平年並みかそれより高め。加えて9月は曇りや雨の日が多く、厳しい残暑が続く見込みとか。そんな時期には、弦楽器の超絶技巧が冴え渡るクールな室内楽でも聴いて、鬱陶しい気分を吹き飛ばしたいもの。
その期待に応えてくれそうな演奏会が9月13日に浜離宮朝日ホールで行われる、シャンドル(ヴァイオリン)とアダム(チェロ)のヤボルカイ兄弟によるデュオ・リサイタルだ。バルトークやコダーイらを生んだ弦楽器王国、ハンガリーでも特にロマの血族が多く定住するという北西部の町、ジェール生まれの彼ら。現在30代半ばで、容姿的にははっきりいって、かの「ヴァイオリンの怪人、ラカトシュ」タイプのぽっちゃり系でおよそクールとはほど遠いように見えるが、巨匠ラカトシュ同様にひとたび楽器を握らせたら、そのスピードと強烈なテクニックで聴衆を圧倒する逸材コンビ。何でもリムスキー=コルサコフの有名な「熊蜂の飛行」の演奏で、2011年に名ヴァイオリニストのデイヴィッド・ギャレットが達成しギネス認定もされた速弾き記録“1分5秒”を大幅に上回る“58秒”の神技をみせたとか。さらには、今年4月の来日時にハンガリー大使館で非公式ながら“53秒台”を記録したとか(こちらはYouTube映像あり)で、既に前評判は上々。
むろん、ただ速いだけでなく、共にウィーン芸術大学で学び、数々の国際コンクールで優勝・入賞を繰り返してきた実力の持ち主だ。その証拠に2009年には2人そろって「ウィーン・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」にも選出されている。しかも正統派ロマの気質を先祖より受け継ぎ、情感あふれる節回しもお手のもの。昨年はウィーン楽友協会大ホールでブルーノ・ワルター交響楽団との共演でブラームスの二重協奏曲を弾きこなして話題を呼び、2015年には同曲をウィーンのコンツェルト・フェラインとも一緒に演奏することも決まっている。
今回のリサイタルではコダーイ「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」から、彼ら自身の編曲によるバルトーク「ルーマニア民族舞曲」やサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、そして「ハイフェッツの名盤を彷彿とさせる」(CD評より)と絶賛のヘンデル=ハルヴォルセン「パッサカリア」まで盛りだくさん。もちろん「熊蜂の飛行」も予定…新記録が生まれるかも。残暑も何のその、これは聴き逃せないコンサートだ!

文:東端哲也
(ぶらあぼ2013年8月号から)

【公演】
●日程 9月13日(金)19:00 浜離宮朝日ホール
●料金 全席指定5,500円
●曲目
コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲
バルトーク(ヤボルカイ編):ルーマニア民族舞曲
ヘンデル-ハルヴォルセン(ヤボルカイ編):パッサカリア ト短調
サラサーテ(ヤボルカイ編):ツィゴイネルワイゼン
リムスキー=コルサコフ(ヤボルカイ編):熊蜂の飛行 ほか

●問・予約:ローソンチケット 0570 -000-407(オペレータ10〜20時)
(24 時間自動音声対応/Lコード:38149)
朝日ホールチケットセンター03-3267-9990 他
※ローソンチケットオペレータ電話およびPCサイトからは座席をお選びいただけます。

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