ローレンス・フォスター(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

巨匠の滋味溢れるサウンドと新鋭のフレッシュなピアニズム


 すごく個性的というわけではないけれど、いつも音楽がしっかりと拵えてあって、聴衆の期待を裏切らない職人的なアーティストは、年を重ねるほどにいっそう味わいを増すものだ。ローレンス・フォスターはまさにこうしたタイプだろう。指揮者デビューは18歳。そこから数多くのオケやオペラ座を率いてきたが、ほとんどがいわゆる大都市の名門というよりは地域密着型の団体で、それはオーケストラ・ビルダーとしての手腕が確か、ということを意味している。来年秋からはポーランド国立放送響の首席指揮者兼芸術監督の仕事がスタートするが、80歳を目前にして同国トップ団体の一つを任されるあたり、次の“人気長老指揮者”の候補に挙がってきそうだ。
 そのフォスターが新日本フィルの11月定期でピアノ協奏曲と交響曲、それぞれ2番を組み合わせたブラームス・プロを振る。どちらの曲も生真面目で力のこもった1番に対して音楽が自由に呼吸している点が魅力だが、気宇壮大なピアノ協奏曲第2番に対し、交響曲第2番はリラックスした親密な感情が表現されていて、コントラストも効いている。ありそうで意外にない組み合わせが、ベテランの選曲の妙だ。
 新日本フィル音楽監督・上岡敏之が絶賛したピアノ独奏のヨーゼフ・モーグにも注目だ。30歳をちょっと超えたところだが、ドイツ人らしいフォルムはもちろんのこと、色彩感を伴う柔らかさやポップなタッチも自在に弾きこなす幅の広いセンスの持ち主。昨年末にはブラームスの協奏曲第2番のCDもリリースしており、実力のほどを測るのに絶好の機会となろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年11月号より)

第597回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
2018.11/16(金)19:00、11/17(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
http://www.njp.or.jp/