藤原歌劇団に所属し、今後アジアでの活躍も期待される楚々とした声が魅力のソプラノ、小松原利枝。宗教曲や歌曲を中心とした名曲アルバムだが、南仏の作曲家セヴラックの親しみやすい子守唄〈私の愛しいお人形〉やイタリア系でNYのメトロポリタン歌劇場で主に副指揮者として活躍したチマーラのラヴ・ソング〈郷愁〉など、20世紀の知られざる佳曲も味わい深い。特に米バークリー大でジャズ・ピアノを専攻した後にオランダで研鑽を積んだ1991年生まれの作曲家・水谷晨による日本語歌曲〈木香薔薇〉は、ミステリアスな雰囲気の中に多彩な色彩が表現されていて必聴。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2018年10月号より)
【information】
CD『ワン ハグ フォーユー/小松原利枝』
サン=サーンス:アヴェ・マリア/モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス/セヴラック:私の愛しいお人形/水谷晨(しん):木香薔薇/ヘンデル:オンブラ・マイ・フ/チマーラ:郷愁/ドビュッシー:星の夜/ベッリーニ:優雅な月よ 他
小松原利枝(ソプラノ)
水谷稚佳子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7877 ¥2500+税