奥深きフィンランドの音楽の森へ
シベリウス生誕150周年であった2015年、ハンヌ・リントゥは、すみだトリフォニーホールで、新日本フィルおよびフィンランド放送交響楽団を相手にシベリウス交響曲全曲演奏会を指揮した。今回の新日本フィルの定期演奏会への登場はそのアンコールともいえよう。
リントゥは、1967年、フィンランド生まれ。シベリウス音楽院で学ぶ。2013年からフィンランド放送響の首席指揮者を務め、今やフィンランドを代表する指揮者の一人に目されている。今回の演奏会では、シベリウスのヴァイオリン協奏曲、交響曲第7番、そして、M.リンドベルイの「タイム・イン・フライト」(昨年のフィンランド独立100周年を祝してフィンランド放送響が委嘱した曲)という、フィンランド・プログラムが披露される。リントゥは、現代音楽の解釈にも優れ、同時代作品の紹介に積極的。今回のリンドベルイ作品の日本初演が注目される。また、そのような長所は、シベリウス解釈にも反映されている。伝統にとらわれすぎないで、新たにスコアを読み直した彼のシベリウス演奏はとても新鮮である。特に第7番は、3年前の全曲演奏会では新日本フィルとの演奏がなかったので、今回の共演がなおさら楽しみである。ヴァイオリン協奏曲で独奏を務めるのは、ヴァレリー・ソコロフ。1986年、ウクライナ生まれ。シベリウスの協奏曲は、DVDに映像を残している、得意のレパートリーである。もちろん、リントゥが指揮するオーケストラも聴きものだ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2018年10月号より)
#595 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
2018.10/19(金)19:00、10/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp/