関西とドイツで活動する高田泰治による、スイスの名工J.G.グレーバー製作のフォルテピアノ(1807年頃製)を使用した録音。「膝で操作するペダルを持つ最後期のモデル」で、貴重なオリジナル楽器だという。1800年前後に書かれたベートーヴェンの二つのソナタ「悲愴」「月光」とバガテルを収録。絶妙な演奏技術により、楽器の音の伸びに従ったテンポで、楽器の能力を可能な限り引き出した起伏豊かな演奏が繰り広げられる。音は華やかで温かい。新鮮で鮮烈な音楽に、作品の真の姿を見るよう。進化する楽器にあわせて作品を発展させた作曲家の意図に応える演奏が収められている。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2018年9月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン・アルバム/高田泰治』
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第14番「月光」、7つのバガテル
高田泰治(フォルテピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7876 ¥2500+税