一つひとつの音が踊っている。協奏曲第2番の歌い出しを聴いただけで、こう感じる向きは多かろう。スウェーデン出身のヴァイオリニスト、ダニエル・ロザコヴィッチは、弱冠17歳のライジングスター。わずか8歳で公式デビューして以来、ゲルギエフ指揮のマリインスキー劇場管やミュンヘン・フィルなど、一線楽団と次々に共演を重ねる。そのデビュー盤となる、協奏曲と無伴奏作品を組み合わせたバッハ録音。輝かしく粒立ちの良い音色と、作品への深い洞察。若者らしい清新さと、オイストラフら往年の巨匠を彷彿させる熟達した気高さ。一見相反するかにも思える、これらの要素を俊英は併せ持つ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2018年7月号より)
【information】
CD『バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番/ダニエル・ロザコヴィッチ』
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番BWV1041-1042、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番BWV1004
ダニエル・ロザコヴィッチ(ヴァイオリン)
バイエルン放送交響楽団室内管弦楽団
オルガ・ワッツ(チェンバロ)
ユニバーサルミュージック
UCCG-1797 ¥2800+税