異才たちのピアニズム――ピアノ音楽の本質を伝える才知との邂逅 イノン・バルナタン

縦横無尽に広がる想像の翼

C)Marco Borggreve
 トッパンホールの「異才たちのピアニズム」は、一風変わったテイストを持つピアニストを紹介するシリーズ。最終回を飾るテルアビブ出身のイノン・バルナタンはアラン・ギルバートが惚れ込み、ニューヨーク・フィル音楽監督時代、専属ポストに迎え入れた才能だ。そのピアノは骨太で力強く、楽譜から音楽をスケール感豊かに、生き生きと立ち上げる。
 バルナタンの個性は想像の翼を縦横無尽に広げていく今回の戦略的なプログラミングからも読み取れる。ドビュッシー「ベルガマスク組曲」の「月の光」、アデス「ダークネス・ヴィジブル」、ラヴェル「夜のガスパール」とつなぐと夜のイメージが浮かんでくる。アデス作品はダウランドのメロディをアクセントやタッチなどで変容させているが、この流れからはアルカイズムや擬古典趣味が読み取れよう。文学的テキストと結びつきの強い前半に対し、後半のムソルグスキー「展覧会の絵」では視覚的イメージへと跳躍する。万物照応を地で行く想像力の果敢なジャンプを愉しみたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年6月号より)

2018.6/26(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com/