スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演

ボヘミアとロシアの名作をじっくりと味わう


 東ヨーロッパを代表するオーケストラの一つであるスロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団が来日する。スロヴァキア・フィルは、スロヴァキアの首都ブラティスラヴァを本拠地とする、1949年に創設されたオーケストラ。創設当時はチェコとスロヴァキアは一つの国であり、初代首席指揮者にはチェコの名匠ヴァーツラフ・ターリヒが就任した。その後、オンドレイ・レナルト、イルジー・ビエロフラーヴェク、ウラディーミル・ヴァーレク、ペーテル・フェラネツらが、首席指揮者や音楽監督を務めた。チェコとは一時期同じ国であったこともあり、伝統的にチェコ音楽を得意としている。また、ブラティスラヴァがウィーンから60キロほどしか離れていないゆえ、ウィーン音楽に対する親和性も高い。
 今回のツアーの東京公演では、名匠レオシュ・スワロフスキーと俊英ダニエル・ライスキン、2人の指揮者がそれぞれ得意のプログラムを披露する。
 スワロフスキーは、現在、スロヴァキア・フィルの常任客演指揮者を務めている。1961年、チェコ生まれ。ノイマンに師事し、コシュラー、ショルティ、アバドらのアシスタントを務めた。また、ブルノ国立フィル首席指揮者を経て、2003年〜05年にはプラハ国立歌劇場の芸術監督も務めている。日本のオーケストラにもしばしば客演し、10年には都響とスメタナのオペラ《売られた花嫁》を共演した。その後、都響とは親密な関係を続ける。また、14年からはセントラル愛知交響楽団の音楽監督も務めている。
 スワロフスキーがチェコ音楽のスペシャリストだけに、今回のスメタナの「モルダウ」、ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」と交響曲第9番「新世界より」というプログラムが非常に楽しみだ(6/25)。しかも、オーケストラはそれらを十八番としているので、共感に満ちた演奏を聴かせてくれるだろう。チェロ協奏曲で独奏を務めるのは日本を代表するチェリストである堤剛。ドヴォルザークの傑作で、日本が誇る巨匠がまさに円熟の至芸を披露してくれるに違いない。
 もう一つの公演では、ライスキンが、オール・チャイコフスキー・プログラムを指揮する(6/18)。ライスキンは、サンクトペテルブルク育ち。ドイツのライン・フィル、ポーランドのアルトゥール・ルービンシュタイン・フィルなどの首席指揮者を歴任し、現在はテネリフェ交響楽団とベオグラード・フィルの首席客演指揮者を務めている。今、ヨーロッパで活躍するロシア出身の気鋭のマエストロのチャイコフスキーに注目だ。
 交響曲第6番「悲愴」では、ライスキンの真価が特に発揮されるだろう。東欧のマエストロたちに薫陶を受けたスロヴァキア・フィルの演奏も楽しみ。ピアノ協奏曲第1番で独奏を務めるのは、やはりロシア出身のアンナ・ヴィニツカヤ。07年のエリーザベト王妃国際音楽コンクールで第1位を獲得した才媛。これまでに、N響、都響、大阪フィルなどの日本のオーケストラとも共演している。彼女の名演にも期待したい。
文:山田治生
(ぶらあぼ2018年5月号より)

2018.6/18(月) 指揮:ダニエル・ライスキン ピアノ:アンナ・ヴィニツカヤ
2018.6/25(月) 指揮:レオシュ・スワロフスキー チェロ:堤 剛
各日19:00 サントリーホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
※スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団の全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。 
http://www.concert.co.jp/