オレグ・カエターニ(指揮) 東京都交響楽団

高密度の演奏で名作の魅力を再発見!


 注目しているファンも多いに違いない。6月の都響定期にオレグ・カエターニが登場する。往年の名匠マルケヴィチを父にもつ1956年生まれ(現在イタリア国籍)の彼は、イタリアでフェラーラ、ロシアでコンドラシンとムーシンに学び、カラヤン指揮者コンクールで優勝。フランクフルト歌劇場等のカペルマイスター、ヴィースバーデン・ヘッセン州立劇場、メルボルン響の音楽監督を歴任したほか、スカラ座やバイエルン放送響等に客演し、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響とのショスタコーヴィチの交響曲全集の録音が賞賛されるなど、重厚なキャリアを築いている。都響にも2009、13、15年に客演し、端正な身振りでダイナミックかつ引き締まった音楽を創出。15年のショスタコーヴィチの交響曲第11番での贅肉のない鋭利な表現は、父譲りを彷彿させもした。
 今回のプログラムは、シューベルトの交響曲第3番、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」のウィーン王道ものと、矢代秋雄のチェロ協奏曲。C.クライバーも録音したシューベルトの3番は、旋律美と爽快な疾走感をもつ佳品、「運命」はむろん隙のない名作であり、カエターニが愛してやまないという矢代の協奏曲は、極限まで練磨されたシリアスな逸品だ。この凝縮度の高い各曲は、カエターニにピッタリであり、見通しの良さと重層感を併せもつ都響の演奏で聴いてみたい演目でもある。チェロ独奏は大人気の宮田大。最近シャープな切れ味とスケール感を増している彼のソロならば、矢代作品の真価を耳新たに堪能できるであろう。
 今回は、実力者たちのピュアな演奏で、作品の魅力を再発見したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年5月号より)

第858回 定期演奏会 Aシリーズ 
2018.6/11(月)19:00 東京文化会館
問 都響ガイド0570-056-057
http://www.tmso.or.jp/