METライブビューイング 2017-18シーズン 後半の見どころ&聴きどころ

大作《セミラーミデ》やMET初演《サンドリヨン》など話題作が目白押し


 メトロポリタンオペラの最新公演を、映画館の大画面で満喫できる「METライブビューイング」。《ノルマ》《魔笛》《トスカ》などヒット作が続出している今シーズン、後半も話題作が目白押しだ。
 シーズン6作目になる《ラ・ボエーム》は、美しくも繊細なF.ゼフィレッリの演出で、METで半世紀愛されている人気プロダクション。クリスマスで賑わうパリのカルチェ・ラタンが再現される第2幕は圧巻だ。《トスカ》の主役で絶賛を浴びたS.ヨンチェヴァら、絶好調の若手が集うキャスティングも楽しみ。
 METでも25年ぶりの上演となる第7作《セミラーミデ》は、今年没後150年を迎えるロッシーニの大作オペラ。アッシリアの女王セミラーミデの壮絶な愛と葛藤を、超絶技巧を駆使した華麗な音楽で描く。ベルカントの若手女王A.ミード、驚異の高音で魅せるJ.カマレナ、バスのトップスターI.アブドラザコフなど、第一線のキャストが揃うのはさすがMET。J.コプリーが演出する壮大華麗な古代絵巻ともども、陶酔を約束してくれるだろう。
 第8作《コジ・ファン・トウッテ》(新演出)は、男女の間に“永遠の愛”は可能かという究極の問いを美しい音楽に包んで差し出す、モーツァルトの野心作。設定を1950年代の行楽地コニーアイランドに置き換えたというP.マクダーモットの演出は、作品のメッセージをおしゃれに軽やかに伝えてくれるはず。S.マルフィ、B.ブリスら期待の新星が演じる恋人たちと、ベテランのC.モルトマン演じる老哲学者の対決は見もの。ブロードウェイの大スターで、2014-15シーズン《メリー・ウィドウ》のヴァランシェンヌ役が大好評だったK.オハラが、ドラマを回すキーロールの小間使いデスピーナを演じるのも話題だ。
 第9作《ルイザ・ミラー》は、「オペラ王」ヴェルディの知られざる名作。身分違いの恋に立ちはだかる邪な愛や政治的な陰謀を、切なくもドラマティックな音楽で描き切る。テノールの名アリア〈穏やかな夜〉は必聴。伝説の名歌手P.ドミンゴから、今のオペラ界を代表するテノールP.ベチャワ、若手スターの筆頭S.ヨンチェヴァやD.ベロセルスキーと、キャストの充実度はシーズンでも指折りだ。チロルの村や貴族の邸宅を重厚に再現するE.モシンスキーの演出ともども、深い感動を与えてくれるに違いない。
 シーズンを締めくくる《サンドリヨン》(新演出)は、フランスの大作曲家マスネの手になる“シンデレラ”物語。シーズン第1作《ノルマ》でも圧倒的な実力を見せつけた大スターJ.ディドナートが情熱を傾ける名作で、なんと今回がMET初演(ちなみに「METライブビューイング」今シーズンのチラシの表紙写真は本作)。きらめく宝石の花束のような音楽を、マスネと同じフランス人L.ペリーの演出が、粋にセンス良く引き立てる。シンデレラの幸せをお裾分けしてもらった気分になれる、極上のプロダクションである。
取材・文:加藤浩子
(ぶらあぼ2018年4月号より)

METライブビューイング2017-18シーズン
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http://www.shochiku.co.jp/met/