【会見レポート】ハンブルク・バレエ団日本公演まもなく開幕!

 バレエ界の“生きるレジェンド”、ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団が、2月2日より東京と京都で公演を行う。これに先立ち1月29日、ノイマイヤーと同団プリンシパルのアレクサンドル・リアブコ、アレクサンドル・トルーシュが登壇し、開幕記者会見を行った。
(2018.1/29 東京都内 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

左より:ジョン・ノイマイヤー、アレクサンドル・リアブコ、アレクサンドル・トルーシュ

 2016年の京都賞受賞記念公演から2年、8度目となる今回の日本公演では、ノイマイヤーの代表作であり、ノイマイヤー自ら「私たちのレパートリーの中で人気の高い作品」と語る『椿姫』と『ニジンスキー』、そして前回大きな反響を呼んだガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉の3演目を上演する。
 京都賞受賞時には叶わなかった京都公演もガラ公演で実現することから、ロームシアター京都では、将来プロを目指す中学から高校生の若きダンサーを対象としたワークショップが開催される。講師は同団副芸術監督でプリンシパルのロイド・リギンズが務めることも話題だ(見学者は1月31日まで募集中、詳細は下記参照)。

左より:ジョン・ノイマイヤー、アレクサンドル・リアブコ、アレクサンドル・トルーシュ

 日本公演開幕を飾るのは、40年前の1978年に初演された『椿姫』。アレクサンドル・デュマ・フィスの小説を基に、高級娼婦マルグリットと青年アルマンの悲恋を描き、同時代に生きたショパンの音楽で構成される、ドラマティック・バレエの傑作だ。
「キャストが変わることで“再発見”があります。アリーナ・コジョカルとトルーシュのリハーサルを見ていて、いままで気づかなかった点が見えてきて少し修正を加えました。同じ作品であっても、観ていただく度に彩りが違う作品として楽しんでいただけると嬉しいです」(ノイマイヤー)
「バレエ団に入って初めてのツアーが日本公演で、『椿姫』ではアンダースタディでした。全てのコール・ド・バレエを踊った経験がある『椿姫』で、今回はデ・グリューとして戻ってくることができ嬉しいです」(リアブコ、2/2,2/4出演)
アレクサンドル・リアブコ

 今回マルグリット役のコジョカルを相手に、アルマンが初役となるトルーシュは「踊ることを夢見ていた役」だと語る(2/2,2/4出演)。
「『椿姫』を初めて観たのは12歳頃で、踊っていたのはリアブコだったと思います。美しいダンサーが高いレベルで踊っているのを長年見てきて、私だったら・・・と秘めた想いを今回お見せすることができるので嬉しい。とても美しいバレエで、音楽の中で踊りが流れていくかのような作品。素晴らしいパートナーのコジョカル、ダンサーに囲まれて踊れることができすごく幸せです」
『椿姫』を初めて観た時に踊っていたのはアレクサンドル・リアブコだったはずと語るアレクサンドル・トルーシュ(右)

 日本では13年ぶりに上演される『ニジンスキー』。ハンブルク・バレエ団にとって重要なレパートリーである本作は、今回の上演にあたり20年前の初演に立ち返り、改訂を加えたという。ノイマイヤーは本作について次のように語る。
「ニジンスキーは20世紀で一番重要なアーティスト。本作は決してドキュメンタリーではなく、作品を観たからといってニジンスキーという人物、生涯が分かるものではありません。彼の悲劇的な人生を切り取り、彼がいかに精神的な深さをもった人間であったかを表現する作品です。
 見ていて確信を持てなくなった部分、ディテールでこだわりたい、こだわりすぎた部分、振付家としてこれまでの経験値から少し変えたいと思うところがあります。プレミエの当時から現在まで、『椿姫』は15分カットしていますが、『ニジンスキー』は違う変化です。今回の上演では、初演の映像を見直し、良いところは取り上げつつ修正を加えました。毎回の公演が新しく、新鮮なものであってほしいという想いで、自分たちが自分たちの気持ちに正直でならなければいけないと思うのです」

ジョン・ノイマイヤー

 タイトルロールを踊るリアブコ(2/10,2/12出演)とトルーシュ(2/11出演)は本作について「非常に難しい作品。テクニック面だけではなく感情面において最も難しい役」と口を揃える。
「創作された際の最初のキャストで、リハーサルからジョンは私なりの解釈で踊ることを許してくれた、思い出深い作品です。何回踊っても難しく、いつも納得いく表現ができるか不安になる。他の作品では体験したことがない特別な演目です」(リアブコ)
「ニジンスキーという人物には多様な人間的側面があり、ダンサーとしてそれを表現できることは素晴らしい体験。心身ともに疲労が伴うが、公演が終わった後に、違う人間になってしまったのではないかと思うくらい、不思議な体験ができる作品でもあります。この経験は他の仲間のダンサーにも感じてほしいし、この後にもニジンスキーが踊れるダンサーが出てくることを願っています」(トルーシュ)
アレクサンドル・トルーシュ

 ノイマイヤー自身が語りで出演し、プリンシパル、ソリストが総出演、これまで振り付けた傑作の名場面を凝縮したガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉は、「次から次へと作品がでてくるのではなく、全体的にテーマ性を持った作品」と語るノイマイヤー。
「私にとってバレエとは、重要な大きな部分です。バレエの物語を伝えていくということは、ある意味、私自身を語っていくこと。ガラでは短いナレーションを挟みながら、バレエがいかにアイディアやインスピレーションを表現する芸術であるかを伝えたい。ただ私の秘密の人生が分かるドキュメンタリーではありません(笑)」

 「いつも日本では特別な時間を過ごしています。毎回2月頃に来日しますが、私が来る年はいつも春が早く訪れます」と笑顔をみせたノイマイヤー。今回の来日公演もノイマイヤーの芸術性に酔いしれる見逃せない公演となりそうだ。

ジョン・ノイマイヤー

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interview ジョン・ノイマイヤー(ぶらあぼ2018年1月号より)
ハンブルク・バレエ団 2018年日本公演 作品の見どころ(ぶらあぼ2018年1月号より)

【公演情報】
ハンブルク・バレエ団 2018年日本公演

『椿姫』
2018.2/2(金)18:30、2/3(土)14:00、2/4(日)14:00 東京文化会館

ガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉
2018.2/7(水)19:00 東京文化会館
2018.2/17(土)14:00 ロームシアター京都

『ニジンスキー』
2018.2/10(土)、2/11(日・祝)、2/12(月・休)各日14:00 東京文化会館

※公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:NBSチケットセンター03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp/
  ロームシアター京都チケットカウンター075-746-3201(2/17のみ) http://rohmtheatrekyoto.jp/


【ハンブルク・バレエ団による特別ワークショップ】
2月14日(水)18:00〜20:00 ロームシアター京都サウスホール
詳細はこちら

ワークショップ見学 申込方法
申込受付期間:2017年12月8日(金)〜2018年1月31日(水)
申込は、以下の①②いずれかの方法でお申込みください。
①ロームシアター京都WEBサイト内のWEBフォーム
②電話 TEL.075-771-6051(10:00 ~ 17:00)
対象:バレエ講師、バレエを学んでいる方(バレエ団・教室等に所属している方)
定員:200名程度
※定員に達し次第、受付を終了いたします
※見学は、サウスホールの1階客席からを予定しております。お席は自由席です

『椿姫』より
Photo:Holger Badekow

『ニジンスキー』より
Photo:Kiran West

ガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉
Photo:Kiyonori Hasegawa