すみだ平和祈念コンサート2018 《すみだ × 広島》

広響を招いて“祈り”と“希望”託すコンサートを


 太平洋戦争末期、東京大空襲があった3月10日は、多くの犠牲者を出した墨田区にとって特別な意味を持つ日。すみだトリフォニーホールにとっても同様であり、この時期は毎年「すみだ平和祈念コンサート」が行われる。
 ホールが開館20周年を迎えた今シーズンは、やはり戦争で大きな傷を負った広島から、平和貢献を活動理念のひとつとする広島交響楽団が来演。2017年4月から音楽総監督を務めている下野竜也と共に「祈りから希望へ」というストーリーがありそうなプログラム(ゼレンカによる憐れみの歌「ミゼレーレ」、ベートーヴェンの「英雄」交響曲から第2楽章、シューマンの交響曲「春」など)でコンサートを行う。首都圏の音楽ファンにとっては、新時代を迎えたこのオーケストラが聴ける大きなチャンス。藤村実穂子(メゾソプラノ)がマーラーの歌曲集「亡き子をしのぶ歌」を歌うことも、こうしたコンサートだからこそ心に迫るものになるはずだ。
 一方で、このホールを本拠地とする新日本フィルハーモニー交響楽団は音楽監督の上岡敏之が指揮台に立ち、ブラームスの交響曲第1番ほかを演奏する。ゲスト・ソリストには、クリスチャン・テツラフに師事し、これからの活躍がますます期待できる大江馨が登場。ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を演奏することにも注目が集まるだろう。定期演奏会にも相応しいプログラムだが、この時期に聴くことで別の感興も湧いてきそうである。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2018年1月号より)

下野竜也 × 広島交響楽団 
2018.3/8(木)19:00
上岡敏之 × 新日本フィルハーモニー交響楽団 
2018.3/10(土)18:00
すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 
http://www.triphony.com/