“巨匠”のラスト・シーズンと“新世代”首席客演指揮者2人への期待
パワフルなエネルギーと繊細な巧さの両立する絢爛なサウンドを持ち、近年は大作オペラの経験も重ねて表現の幅をさらに拡大、ますます好調の度合いを増す読売日本交響楽団。2018/19シーズンも豪華かつ意欲的なラインナップで、特に注目される公演をご紹介したい。
常任指揮者として最後のシーズンを迎えるシルヴァン・カンブルランは、2018年4月、9月、19年3月、計9演目15回の演奏会に登場する。すべてが常任としての集大成と目される公演になるが、最注目はシェーンベルク「グレの歌」(19年3月)。巨大編成オーケストラに合唱、5人の独唱が必要な超大作で、演奏機会自体が稀少だが、数々の大曲で名演を実現してきたカンブルランの統率でその真価を体験できる、またとない機会となる。ほかの公演も、ストラヴィンスキー「春の祭典」やドビュッシー「海」、交響曲ではマーラー第9番、ベートーヴェン第7番、ブルックナー第4番、といった名作が並び、ベルリオーズ「幻想交響曲」で常任指揮者ラスト公演を迎える。
さらに大きな話題になっているのが、2018/19シーズンより山田和樹が首席客演指揮者に就任すること。今シーズンから同ポストに就任したコルネリウス・マイスターと“2人体制”となり、それぞれ約2週間で3演目4回ずつの公演を集中的に行う。マイスターは6月、《影のない女》交響的幻想曲などのR.シュトラウス・プロ、ドヴォルザーク交響曲第8番ほかの名作プロ、そしてマーラー交響曲第2番「復活」は東京と大阪で披露する。山田は19年1月にサン=サーンス「オルガン付き」とレスピーギ「ローマの祭」の“祝祭プロ”、念願だったというリムスキー=コルサコフ「シェエラザード」ほかの“色彩プロ”、邦人作品とスクリャービン「法悦の詩」などの“法悦プロ”(以上、山田自身のコメントより)に挑む。30代にしてヨーロッパ名門楽団のシェフも務める、山田(1979年生)とマイスター(80年生)。2人の瑞々しい感性と読響との融合に期待が膨らむ。
10月には、世界の古楽シーンを代表する、好対照の2人の指揮者が出演する。まずは読響初登場のジョヴァンニ・アントニーニ。イタリアの古楽集団イル・ジャルディーノ・アルモニコのリーダーとして生命力あふれる尖鋭的な演奏で知られる鬼才で、バロックと古典作品での斬新なパフォーマンスが楽しみ。その直後には名匠・鈴木雅明が久しぶりに読響に登壇。RIAS室内合唱団と共に奏でるメンデルスゾーン作品で、誠実かつ清新な演奏を味わいたい。
豪華なソリストたちとの共演も読響ならではの特長。ヴァイオリンの諏訪内晶子(9月)やヴィクトリア・ムローヴァ(10月)、ピアノのピョートル・アンデルシェフスキ(9月)やピエール=ロラン・エマール(19年3月)ら、次々に登場する世界的名手たちにも注目だ。
読響は昨年度からシリーズごとに、「土曜/日曜マチネーシリーズ」は“昼間に楽しめる名曲集”、「名曲シリーズ」は“ちょっとコア向けの作品”、「定期演奏会」は“さらに一歩踏み込んだ作品”というカラーを明確化し、多様なリスナー層にアピールしている。最高の演奏家たちと考え抜かれたプログラミングで多彩な作品が楽しめる、読響ならではのシーズン・プログラム。各シリーズで充実の時間を過ごしたい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2017年12月号より)
2018/19シーズン年間会員券
2017.12/9(土)発売
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/