冨永愛子(ピアノ)

大切にしているラフマニノフを弾いてソロ・アルバム・デビュー!

 2008年に第6回東京音楽コンクール第1位を獲得して以来、独奏はもちろん、協奏曲、室内楽にと幅広く演奏活動を展開するピアニストの冨永愛子が、来年デビュー10周年を迎えるにあたり、初のソロ・アルバム『リラの花』をリリースする。彼女にとって重要な作曲家であるラフマニノフを中心としたロシアの香りただよう内容となっている。
「ラフマニノフは東京音楽コンクールのテープ審査に2次予選、さらに本選でも演奏しました。それ以来私にとって本当に大切な作曲家です。決して私は手が大きいわけではないのですが、実際に弾いてみると、すごく体になじむ作曲家なのです」
 今回の選曲については完全に冨永のこだわりが反映されているという。
「どうしてもラフマニノフは入れたい、と思っていたのですが、弾きたい曲がたくさんあり悩みました。ただ今回収録した『ショパンの主題による変奏曲』は、留学時代から絶対にきちんと弾きたいと思ってあたためていた作品なので、録音することができてとても嬉しいです。あとは調性の流れなども聴いてくださる方に楽しんでいただけるような観点で選曲しています」
 今回はショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章のバラキレフ編曲版も収めている。
「何か1曲、トレードマークとなるような曲があるほうがいい、ということを以前指揮者の方にアドバイスされたんです。そこで思いついたのがこの曲でした。留学から帰ってきてからショパンの協奏曲第1番を演奏する機会があったのですが、オーケストラとの絡み合いや音に対する想像力というものが広がったんですよね。ありがたいことにこれまで協奏曲の演奏機会をたくさんいただいてきたので、その経験を反映できる曲でもあります」
 同じロシア人作曲家であるプロコフィエフの組曲「ロミオとジュリエット」の抜粋も収録したが、これはドイツ留学中にたくさんのオーケストラに触れたことが大きく関わっている。
「ピアノを弾く上では他の楽器のこともよくわかっていないといけないと思いますので、ドイツやヨーロッパ各国でオーケストラの音色を存分に堪能できたことは財産になっています。『ロミオとジュリエット』は実際にバレエを観たことで強く惹かれていた作品ですが、多彩な音色が求められる作品なので、その経験を活かせたかなと思っています」
 今回のCDは、特に他の楽器との共演によって音楽性をより広げてきた冨永のこれまでの集大成ともいえるものとなっている。豊かな歌心と多彩な音色を存分に堪能してほしい。また、ヤマハ銀座店のコンサートサロンでのCDリリース記念公演もあるので、彼女のピアニズムを直接体験したい方はぜひ。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2017年12月号より)

CDリリース記念
冨永愛子 ピアノサロンコンサート
2017.12/1(金)19:00
ヤマハ銀座コンサートサロン
問:ヤマハ銀座店ピアノ売場03-3572-3132
http://www.aikotominaga.com/

CD
『リラの花/冨永愛子』
日本アコースティックレコーズ NARD-6007
¥3000+税
2017.11/21(火)発売