日本のサクソフォンのレベルは極めて高い。数ある四重奏団もみな上手い。その頂点に立つ名手として長年同楽器界を牽引してきたのが須川展也、最高峰に位置してきた四重奏団が須川率いるトルヴェール・クヮルテットである。1987年に須川と彦坂眞一郎、新井靖志、田中靖人の4人で結成。以来、世界トップレベルの四重奏団として活躍し、破格の技量や高機能のアンサンブルはもとより、立体的なサウンドと自在かつ高度な表現、生気と躍動感に充ちた音楽で、万人を魅了してきた。
そんな彼らが今年結成30周年を迎え、東京文化会館小ホールで、2日にわたる記念公演を行う。結成間もない頃から参加しているピアニストの小柳美奈子も出演。プログラムは両日共通のラヴェルの弦楽四重奏曲以外、すべて異なっている。
初日は「G線上のアリア」に始まり、彼らの名を知らしめた「トルヴェールの《惑星》」より「金星」「木星」等を経て、長生淳の「ティプシー・チューン」で締めくくられる。30周年記念アルバムに収録された長生の作品は、ロマ音楽をテーマにした遊び心たっぷりの1曲だ。
2日目は「My Favorite Things」に始まり、「トルヴェールの《惑星》」より「地球」等を経て、石川亮太の「ナポリ!ナポリ!ナポリ!」に至る。そしてラヴェルの四重奏曲は、昨年9月に急逝した新井靖志(今回は神保佳祐が出演)の編曲。そこに功労者への想いが込められる。
両日とも彼らの多彩な魅力が発揮される内容ゆえに、通して聴くのも良し。サクソフォン独特の豊穣なサウンドと最高の妙技を満喫しよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2017年10月号から)
2017.10/8(日)、10/9(月・祝)各日14:00 東京文化会館(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp/