初演から10年、Kバレエ カンパニー『海賊』が出航!

 熊川哲也率いるKバレエ カンパニーがSpring Tour2017として5月24日より東京・Bunkamuraオーチャードホールを皮切りに大阪、香川で『海賊』を上演。これに先立ち23日、中村祥子&遅沢佑介&伊坂文月組のゲネプロ(最終舞台稽古)が公開され、芸術監督の熊川の会見も行われた。
(2017.5/23 Bunkamuraオーチャードホール 取材・文:高橋森彦 最終舞台稽古写真:C)Shunki Ogawa、Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

熊川哲也

 Kバレエ カンパニーが『海賊』を初演したのは2007年。ガラ公演やコンクールにおいて抜粋の踊りは定番であるが全幕で上演される機会は多くはない。この古典作品に挑むに際し、熊川は台本を改訂し、複数の作曲家の楽曲が混在する音楽を整理して、壮大で比類なきアドベンチャー大作に仕上げた。以後再演を重ね、公開ゲネプロで披露された舞台からは10年の集積と同時に新たな息吹が感じられた。

 プロローグからして鮮烈だ。海賊たちが商船を襲撃し、財宝を手にして騒いでいるところに大きな嵐が発生し、海賊船はあえなく難破してしまう――。ハイテンポでスペクタクル感満載の展開によって一気に引きこまれる。海賊の首領コンラッド、その忠実な臣下であるアリの固く結ばれた主従関係、海賊や奴隷商人たちの欲望渦巻く世界、ヒロインのメドーラと妹のグルナーラといった美しき女性たちの踊り……。多彩に入り乱れるドラマを隙なく組み立てながら、華麗でエネルギッシュな踊りを存分に楽しませてくれる。

公開ゲネプロよりメドーラの中村祥子
C)Shunki Ogawa

公開ゲネプロよりコンラッドの遅沢佑介(中央)
C)Shunki Ogawa

 コンラッドの遅沢佑介は貫禄十分で堂々たる男ぶり。奴隷商人によって囚われの身となるメドーラを中村祥子が気高く凛として踊る。熊川の当たり役のひとつであるアリに挑む伊坂文月(ふづき)も陰影深い演技に加えて伸びのある跳躍、切れのある回転技が冴えていた。海賊たちの宴やハーレムでの女性たちの踊りなど見せ場に事欠かず、グルナーラの小林美奈、奴隷商人ランケデムの堀内將平ら注目株たちがスピード感溢れる踊りを披露する。そしてクライマックスは独自の展開を見せ、アッと驚くとともにじつに感動的なシーンとなる。熊川版『海賊』は、豪華な踊りがスリリングなドラマと分かち難く結びついた稀有な創造だとあらためて思わせられる。

公開ゲネプロよりグルナーラの小林美奈(中央左)とランケデムの堀内將平(中央右)
Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE

公開ゲネプロより中村祥子とアリの伊坂文月(左)
C)Shunki Ogawa

公開ゲネプロより遅沢佑介(左)、中村祥子(中央)、伊坂文月(右)
Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE

 熊川は「うちの海賊たちはジャック・スパロウ(映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズに登場する海賊)よりもカッコいいです(笑)」と報道陣を笑わせながら、「10年やっているので“鉄板”作品。非の打ち所がないかなと思っています」と自負する。その上で「新しい若手のダンサーが踊ることで色も変わるし、彼らのアプローチも全然違う」とアピール。若手の台頭がよほど心強いようで「ギラギラした山本(雅也)とか益子(倭)とかがダンスバトルをしている」と目を細めうれしそうに語った。

熊川哲也

 なおKバレエ カンパニーは6月に『ジゼル』を上演し、国際的なキャリアを誇る中村が意外なことに初めてタイトル・ロールに挑むのが話題。さらに10月、世界初演の新作『クレオパトラ』を発表する。「大作になると思います。舞台上で出せる最高の紀元前の『クレオパトラ』を見せたい。キャッチーな感じがします」と抱負を話した。歴史を重ねつつ新たなチャレンジにも意欲的なKバレエ カンパニーの航海が順風満帆であることを願いたい。

Tetsuya Kumakawa
K-BALLET COMPANY
Spring Tour2017
『海賊』
5月24日〜28日 Bunkamura オーチャードホール
6月10日 フェスティバルホール
6月17日 レクザムホール(香川県県民ホール)

問 チケットスペース03-3234-9999(東京) 
  フェスティバルホール06-6231-2221(大阪)
  香川県県民ホールサービスセンター087-823-5023(香川)

*公演の詳細、配役は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.k-ballet.co.jp/company/