ロームシアター京都が2017年度自主事業のラインナップを発表

記者発表会から 左より)高木正勝(映像作家/音楽家)、白井 剛(ダンサー/振付家)、木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)、糸井幸之介(劇作家/演出家/音楽家)、岡田利規(演劇作家/小説家/チェルフィッチュ主宰)、影山裕樹(編集者/ライター)
Photo:M.Terashi/Tokyo MDE

 ロームシアター京都が3月28日に記者発表会を開き、2017年度自主事業のラインナップを発表した。
 17年度は、拡がる<普及>、伸びる<育成>、未来へ<創造>、出会う<フェスティバル>、参加する劇場へ、の5つを柱に掲げ、自主事業を行う。主なクラシック音楽、ダンス関連事業は次の通り。
 京都市交響楽団がクラシック音楽普及を目指す「京都発見! クラシックvol.6,vol.7(8/16,18.3/27)」は、京都に縁のあるゲストを招いてトークとクラシック音楽を楽しむイベント。vol.6は女優の山村紅葉をゲストに迎える。
 異ジャンルのアーテイストで構成する「京響クロスオーバー(12/23)」は、田代万里生をゲストに迎え、ミュージカルナンバーを披露する。
 次世代の育成プログラムとして、京都オペラ協会がモーツァルトのオペラ《皇帝ティートの慈悲》(6/25)を、「新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演」では高関健指揮京都市交響楽団が《蝶々夫人》(10/30,11/1)を上演する。
 劇場の財産となる新作を創造し未来へとつなげる『レパートリーの創造』第一弾として、木ノ下歌舞伎が「心中天の網島—2017 リクリエーション版—」(10/5〜10/9)を上演。創造プログラムとしては、ダンスの白井剛が世界最高峰のクァルテット、アルディッティ弦楽四重奏団と共演する(6/23)。
 <フェスティバル>として昨年初めて開催した京都岡崎音楽祭「OKAZAKI LOOPS」を今年は6月に時期を移し開催(6/10〜11)。渋さ知らズオーケストラ、高木正勝オーケストラコンサート with 広上淳一×京都市交響楽団の公演などが予定されている。
 そのほか、「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2017」(10/14〜11/5)も開催するが、今回は「東アジア文化都市 2017京都」のコア事業として行い、初めて韓国、中国の団体を紹介する。

■橋本裕介(ロームシアター京都プログラム・ディレクター)
 2016年1月のリニューアルオープンから1年にわたって開催したオープニング事業では、主催36事業を実施し、138事業がオープニング記念の冠公演として開催されました。14万人を超える来客があり、劇場全体では250万人が来場しました。
 いよいよ2017年度からは、劇場のレギュラーシーズンが始まります。ロームシアター京都が目指す京都の劇場文化を作る歩みをより進めるべく、自ら企画に取り組んだ多彩な事業を続々とスタートさせます。洋の東西を問わず世界水準の優れた作品をお届けすることはもちろん、劇場の財産となる作品のプロデュース、そして次代を担う芸術家の育成にも取り組み、さらにロームシアター京都の開かれた場として、人々の交流を活性化させるべく、京都の様々な施設や団体と連携しながら地域に根を下ろしていく事業を展開します。

 

 

 
■広上淳一(指揮者、京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)
 ロームシアター京都オープンから1年が経ちホールには様々な音楽が刻み込まれてきたことと思います。私も京都市交響楽団とともに幾度もこのホールに音楽を届けて参りましたが、京都で音楽文化が発信できる素敵なホールが誕生したなと感慨深く感じております。
 今回は昨年参加させていただいた、京都岡崎で誕生した音楽祭『OKAZAKI LOOPS』にて京都で生まれた才能ある作曲家、高木正勝さんとの共演が実現します。今回、高木さんが作曲され、私も家族もファンである映画『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』の劇中音楽に特化し、フルオーケストラで演奏するという壮大なコンサートです。映画の世界感はもとより、高木正勝さんの才能を存分に感じていただけるコンサートにしたいと今からわくわくしております。高木正勝と協働して新しいコンサートを作り上げます。ご期待ください。

■高木正勝(映像作家/音楽家)
 昨年9月にOKAZAKI LOOPSの第1回目に出演させていただきました。そのときは『大山咲み(おおやまえみ)』というタイトルでした。僕自身が兵庫県の小さな村に最近引っ越しましたのでその村の祭りのような、里山のような雰囲気でやらせていただいたのですけれども、今年はそれと打って変わって広上さん率いる京響のオーケストラと一緒にやらせていただきます。
 ホールでこのような形でひとつの楽曲として演奏するのは実は初めてでして、ちょっとどうなるかが期待半分、不安半分。僕もピアノを演奏しますので、広上さんのパワフルな人柄に甘えさせていただいて楽しもうと思っています。

 

 

 

 

 
■白井剛(ダンサー/振付家)
 アルディッティ弦楽四重奏団とのダンスのコラボレーションで6月に上演させていただきます。彼らアルディッティ弦楽四重奏団は、現代音楽を長い間牽引してきた現代を代表するアーティスト達です。彼らが日本に来る機会はもともと少ないのですが、今回の日本ツアーのなかで京都でのみ、クセナキスの音楽とダンスの共演を行います。
 特に現代音楽というのは、あまり聴きなじみの無い方にはとらえどころが無いというかよく分からないようなイメージがあるかもしれませんが、卓越したミュージシャンの方々の演奏を生で見ると、その音がよりよく見えてきますし、より音楽の持つダイナミズムを身体で感じることができます。ぜひそれを体験していただきたいなと思います。クセナキスが考えているような方法論を取り入れていきながら身体の感覚とか衝動のようなものを自分の中で1つの論理体験として凝縮できるような振付を考えなくてはいけないと思っているところです。それによってクセナキスの音楽と時にはぶつかり合ったり時にはスルーし合ったりそれぞれが自立して走りながら何かが響き合うようなそういう共存できる瞬間を見つけたいなと思っています。

 
■木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)
 木ノ下歌舞伎は京都を拠点にしている団体で、歌舞伎の演目を現代劇に作り替えている団体です。毎回違う演出家を招いて、タッグを組みながら作品を作っていくというスタイルで活動しています。今回は、関東で活動されている劇団「FUKAIPRODUCE 羽衣」の演出家の糸井幸之介さんをお招きして近松門左衛門の代表作の『心中天の網島』を作ります。
 この作品は2015年に上演しているもののリ・クリエーションとなります。単に再演するわけではなく、いろいろと、もう一度考えたりしながら初演を踏まえてバージョンアップしたものを上演したいと思っています。
 『心中天の網島』はもともとは浄瑠璃でして1曲のものすごい長い歌みたいなものですよね。そのため、台詞だけではなくて音楽という側面からもアプローチしないとこれはなかなか上演できないなと思っていました。近松の音曲と糸井さんの作歌性をどのようにかけ合わせていくかというところが本作のみどころなんじゃないかなと思っています。
 木ノ下歌舞伎という劇団は割と歌舞伎が好きなお客さんや、現代劇が好きなお客さんが来てくださるんですけれども、例えばクラシックが好きだとか、ミュージカルが好きだとか、もしくは全く演劇を見たことはないけれどもなんとなく楽しそうで来ましたという様々なお客さんがロームシアター京都を通してこの作品を見ていただけたら嬉しいな思っています。

ロームシアター京都 
http://rohmtheatrekyoto.jp/
京都岡崎音楽祭 OKAZAKI LOOPS
http://okazaki-loops.com/