華麗でスリリングな音の悦楽を味わいたい
オーケストラを聴く醍醐味のひとつが、その音色の多彩さ。多種多様な楽器の組合せによって、ほとんど無数とも呼べる音のパレットを作り出す。では、色彩感の豊かさという点で、オーケストレーションの達人はだれかと問われれば、まっさきに思い起こすのがイタリアのレスピーギではないだろうか。とりわけ交響詩「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭」からなる「ローマ三部作」は、その豪華絢爛たるサウンドによって高い人気を誇っている。
今回、その「ローマ三部作」に挑むのが飯森範親指揮の東京交響楽団。東京交響楽団の近年の充実ぶりには目を見張るが、オーケストラの機能美と響きの美しさを味わうには最適なプログラムといえる。正指揮者として同楽団と意欲的な活動をくりひろげる飯森が、オーケストラのポテンシャルを最大限に引き出してくれることだろう。会場がミューザ川崎シンフォニーホールである点も心強い。最強奏時であってもバランスよく美しい響きを聴かせる同ホールの特徴が生きるプログラムだ。
三部作それぞれに聴きどころは多い。「ローマの噴水」では4ヵ所の噴水を夜明けから日没まで時間軸に沿って描くというアイディアがおもしろい。「ローマの松」では金管楽器のバンダが加わって一大スペクタクルが展開される。「ローマの祭」では古代幻想と祭りの熱狂の対比が鮮やか。華麗でスリリングな音の悦楽に、どっぷりと身を浸したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年3月号から)
第59回 川崎定期演奏会
3/18(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/
他公演
3/19(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館(025-224-5521)