がんばろう日本!スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金チャリティーコンサート

ベートーヴェンで震災遺児たちを応援

 6年前の春、震災と原発事故の影響から重苦しい空気が充満するなか、音楽家たちは「自分になにができるか」と悩みながらも行動を起こし、4月以降は数多くのチャリティーコンサートが開催され、平時では考えられなかったような顔ぶれによる公演も実現した。そういった公演のひとつが、この毎日新聞社主催の「がんばろう日本!スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金チャリティーコンサート」で、その後も継続して毎年開催される代表的なチャリティーイベントになった。読響コンサートマスターの小森谷巧がリーダーとなり、全国各地で活躍中の名演奏家たちが集う、“スーパー”の名にふさわしいオーケストラが年に一度だけ結成されるのである。
 「毎日希望奨学金」とは、毎日新聞社が設けた、東日本大震災で保護者を亡くした「震災遺児」を支援する制度で、学業継続が困難になった生徒や学生に奨学金を給付するもの。本公演では出演者が募金箱を持って直接協力を呼びかける光景も定着している。
 7度目となる今年は、堂々たるベートーヴェン・プロが組まれた。なかでも仲道郁代をソリストに迎えるピアノ協奏曲第5番「皇帝」は楽しみ。作品全体に要求される立派な造形や雄大さはもちろんのこと、感動的な緩徐楽章における仲道ならではの繊細な表現にも期待がふくらむ。
 指揮は近年評価上昇中の海老原光。東京シティ・フィルのアソシエイト・コンダクターを務めたほか、国内外の主要オーケストラに客演を重ね、テレビ番組出演など活動範囲も広げている注目株だ。今回の「エグモント」序曲と交響曲第5番「運命」はいずれも、古典的な表現で言えば「苦悩から歓喜へ」の代名詞的作品。“ど直球”の超名作たちで、この大切な一夜にふさわしい、入魂のベートーヴェンを披露してくれるに違いない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ 2017年3月号から)

3/24(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:毎日新聞社事業本部03-3212-0804/テンポプリモ03-5810-7772
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