横浜芸術アクション事業 マーク・パドモア(テノール) × ティル・フェルナー(ピアノ) 「冬の旅」

「冬の旅」の真の姿を求めて

 語るように歌う透明で繊細な美声のシューベルトは濃厚な物語性を持つ。この数年、それを日本でも繰り返し聴けるのは、リート・ファンには堪らない体験だ。現在50代半ばのマーク・パドモアが、シューベルトの三大歌曲に取り組み始めたのは40歳を過ぎてからだという。まさに満を持してという言い方がふさわしい。一昔前まで低声歌手のレパートリーというイメージだった「冬の旅」だが、もともとテノールの音域で書かれていることはよく知られている。低声用は、全曲を一様に下げるのではなく、曲ごとに任意に移調しているので、原曲の24曲の調性関係は崩れているのだ。つまり、青春のさすらいをテーマにしたミュラーの詩にテノールの声のほうがふさわしいというドラマトゥルギー的な問題以上に、シューベルトの意図した響きが聴けるのが原調によるテノールの演奏だ。ウィーン生まれのティル・フェルナーが、シューベルトのエッセンスをさらに色濃く加えてくれるだろう。
文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年2月号から)

2/14(火)19:00 横浜みなとみらいホール(小)
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000
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