野尻多佳子(ピアノ) 〜如月 音幻想 2017〜

繊細さと烈しいドラマが交錯する世界

Photo:JUNKO TOMIYAMA
Photo:JUNKO TOMIYAMA
 野尻多佳子は国内外でソロ、室内楽と多岐にわたる演奏活動で高く評価されるピアニスト。彼女の演奏会は毎回、詩情豊かなテーマを持っているのが特徴であり、この2月に紀尾井ホールで開催される公演も「如月 音幻想」のタイトルが冠されている。
 ショパン「ソナタ第2番」に、リスト「ソナタ ロ短調」というロマン派のソナタの傑作を軸に、シューマン「子供の情景」、シルヴェストロフ「2つの小品」が並び、高い技巧と錯綜する感情や情景を描き出す音楽性をアピールする内容となっている。シルヴェストロフはウクライナ出身の現代作曲家だが、機能和声や旋法も駆使しながら“抒情性”を追求した作風であり、今回演奏される「ベネディクトゥス」と「サンクトゥス」という聖歌のタイトルを持つ2つの小品はそれを体現したもの。
 奏者の息遣いまで伝わる紀尾井ホールで、繊細さと烈しいドラマが交錯する世界に浸ってみてはいかがだろうか。
文:長井進之介
(ぶらあぼ 2017年2月号から)

2/25(土)19:00 紀尾井ホール
問:オーパス・ワン042-313-3213
http://opus-one.jp/