宮村和宏(オーボエ)

CD&ライヴで伝えるオーボエの新たな音世界

Photo:おのしの
Photo:おのしの
 東京佼成ウインドオーケストラのオーボエ奏者として無類の存在感を発揮している宮村和宏。ソロや室内楽でも活躍する名手が、デビュー20周年を迎えて、1月には新アルバム『マジック・オーボエ』をリリースし、2月に記念リサイタルを行う。
 新譜の中心を成すのは、前作で魅せたヴィルトゥオーゾ・ピースではなく、モーツァルトの室内楽作品。
「30歳を超えてから、正統的な音楽様式に則った演奏を突き詰めたいと考えるようになりました。モーツァルトの魅力は、自然界にしかないような完璧な美。これを人が作ったのは凄いとしか言いようがありません」
 シュヴェンケ編曲の五重奏版「グランパルティータ」を主軸に、オーボエ四重奏曲、ヴェント編曲のフルート四重奏版「魔笛」序曲を加えた、モーツァルト・プログラムになっている。
「『グランパルティータ』は、管楽器の全合奏曲中、随一の名曲。全編この上なく大好きです。シュヴェンケは、かのシュタードラーの友人で、当時の作曲者の様式感を熟知しているため、アレンジにも違和感がありません。しかも第2メヌエット(第4楽章)に、原曲にない第3のトリオが加えられているのが面白い。オーボエ四重奏曲は、コンチェルトの様式で書かれた、オーボエの魅力をフルに伝える曲。モーツァルトの貴重なオリジナル曲を演奏するのは無上の喜びであり、終楽章におけるオーボエが2/2拍子で伴奏が6/8拍子の部分など、初演者ラムのために凝らされた趣向も妙味です」
 共演者は、「芸大カンタータ・クラブの後輩で、パーフェクトな音楽家」鈴木優人(ピアノ)、同じクラブ出身の長岡聡季(ヴァイオリン)と吉田篤(ヴィオラ)に、「共演機会の多い」朝吹元(チェロ)という「尊敬し合える仲間」が揃った。
 リサイタルでは、このアルバムに収録されたモーツァルト2曲に、「必ず入れるようにしている」という現代曲が2つ加わる。
「まず望月京さんの無伴奏曲『青い森にて』。初めて取り組んだ際、1週間仕事を断って毎日5〜6時間練習したほど、技巧的には大変な曲ですが、音楽は非常に美しく、世界観があまりに素晴らしい。オーボエ奏者にもっと広めて、スタンダードにしたい曲です。もう1つは吹奏楽で知られる伊藤康英さんの委嘱新作。最近、調性音楽の在り方に興味があって、和声感の形骸化が問題だと感じています。そこで正統的な調性音楽を書ける稀少な作曲家である伊藤さんに、『サン=サーンス、プーランクに次ぐオーボエ・ソナタの名曲』をお願いしました。クラシックのフォルム感のあるソナタを、中高生がオーボエに取り組む窓口にし、将来に向けて発信したいと思っています」
 CD、リサイタルのいずれも他に類のない内容。完成度の高さとライヴ感という各々の魅力を、共に味わいたい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年2月号から)

宮村和宏 オーボエリサイタル
〜デビュー20周年&2ndアルバム発売記念〜
2/17(金)19:00 ヤマハホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://miyamuuoboe.com/

CD
『マジック・オーボエ/宮村和宏』
日本アコースティックレコーズ
NARD-6006
¥3000+税
1/22(日)発売