希少な美声の持ち主と巨匠との共演
「カラスやテバルディが持っていた親密さと暖かみのある声を維持している」。オーストリア伝統のピアニズムを受け継ぐ巨匠イェルク・デームスがこう絶賛するのが、ソプラノの阿久津麻美の歌声。東京芸大に学び、リサイタル活動や宗教作品のソリストとして秀演を重ねる一方、合唱団のヴォイストレーナーとして指導にも取り組んでいる。「さらに上級クラスで、勉強してみないか」。エリー・アーメリンクのレッスンを受ける彼女の声を耳にして、声を掛けたのは、デームスの方からだった。
そして、自然と音楽に浸る中、さらなる飛躍を遂げた阿久津。「恩返しのつもりで、臨みたい」と語る、巨匠とのリートの夕べ。前半ではシューマン「女の愛と生涯」を軸に、モーツァルト、ショーソン、ドビュッシーと歌い、デームスがソロでシューマン「子供の情景」を添える。そして、後半は「万霊節」などR.シュトラウスの名歌、山田耕筰「鐘が鳴ります」、J.シュトラウスⅡ「春の声」に加えて、「愛の歌」などデームスの自作も披露する。
文:笹田和人
(ぶらあぼ 2016年11月号から)
11/30(水)19:00 王子ホール
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