『ON-MYAKU 2016 —see/do/be tone—』

音・ダンス・映像が高度に融合

写真提供:東京文化会館 ©bozzo
写真提供:東京文化会館 ©bozzo

 現代音楽の珠玉の作品の演奏に、最先端の映像とダンスがリアルタイムに対応し、今年1月にかつてない舞台を創り出したのが『ON-MYAKU』である。コンテンポラリー・ダンスの白井剛、ピアニストの中川賢一、ビジュアルアーティスト・プログラマーの堀井哲史(ライゾマティクス)という各界を代表する3人が顔を合わせた。
 ジョン・ケージやヤニス・クセナキス、リュック・フェラーリといった現代音楽の巨匠達の作品が中川によって次々に演奏される。それを堀井は様々なデバイスで取り込み、データ化するわけだ。たとえばMIDIピアノで、打鍵のみならずその強弱までをも読み取る。またダンサーの白井にも腕にセンサーをつけさせ、筋電・加速度・傾き・ジャイロ等のデータを瞬時に読み取る等々。これ以外にも様々なデバイスから得られたデータを映像に即応させていく。
 たとえば初演時にはスティーブ・ライヒの「ピアノ・フェイズ」を使った。ミニマルなフレーズに合わせ、白井は数秒遅れて表示される自分自身の残像と踊ったのである。「過去」と踊っている「現在」のダンスは数秒後の「未来」に供される。3つの時制が同時に存在しているダンスを創り出してみせた。
 技術を見せつけるのではなく、いかにそれぞれが舞台芸術に溶け込んで機能しているかが肝要なのだ。これは数少ない成功例といえる。初演の公演中でさえ様々なアイディアが盛りこまれ続けた本作。再演でどれだけ成長していることか、じつに楽しみである。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ 2016年11月号から)

11/6(日)15:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール
問:愛知県芸術劇場052-971-5609
『ON-MYAKU 2016』特設サイト
http://on-myaku.com