名手デュオならではの円熟を極めたハーモニー
ヴァイオリンの澤和樹とピアノの蓼沼恵美子、深淵な音楽性と美しい音色を兼ね備えた2人の名手がデュオを結成してから、40周年を迎えた。記念リサイタルでは、これまでの幅広い取り組みを俯瞰する、古今の佳品をプログラミング。阿吽の呼吸によって織り上げられる、円熟を極めたハーモニーで魅せる。
ロン=ティボーとヴィエニャフスキ、両国際コンクールなどで入賞を重ねた澤が、蓼沼とデュオを組んだのは、東京芸大在学中の1976年。同大学院修了後の80年からは、文化庁在外研修員として共にロンドンへ留学、その3年後には、“超難関”として知られるミュンヘン国際音楽コンクールのデュオ部門で、第3位入賞を果たした。
帰国後、澤はソロ活動や自ら主宰する弦楽四重奏団、蓼沼も妹の明美とのピアノ・デュオでの成果を、このデュオ活動へとフィードバック。現在は東京芸大学長を務めるなど、特に澤は後進の教育でも多忙を極めるが、デュオとしての活動は絶えず継続し、そのハーモニーを磨き上げてきた。また、ヘンシェル弦楽四重奏団を交えて、五重奏の形でも名演を披露するなど、多層的な活動も展開する。
記念リサイタルでは、まず、大切に弾き込んできたベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタから第6番を。次に、澤は楽器を持ち替え、ヒンデミットのヴィオラ・ソナタを披露。そして、再びヴァイオリンを手に、シマノフスキ「ロマンス」と武満徹「11月の霧と菊の彼方から」(1983)、フォーレのソナタ第1番と、彩り豊かに聴かせてゆく。
文:笹田和人
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
11/6(日)14:00 東京文化会館(小)
問:アスペン03-5467-0081
http://www.aspen.jp