ドビュッシーと北斎の幸せな出会い
クロード・ドビュッシーが、日本の浮世絵や蒔絵などの工芸品に強い関心をもっていたというエピソードは、よく知られている。そうした中には葛飾北斎作の浮世絵「神奈川沖浪裏」があり、後に管弦楽曲「海」の初版スコアで表紙を飾ったことも有名だ。その北斎は1760年に現在の墨田区亀沢町あたりで生まれたが、そうした縁もあって錦糸町のすみだトリフォニーホールでも、一角に北斎の紹介コーナーがある。さらには今年の11月22日、両国駅にほど近い緑町公園内に「すみだ北斎美術館」がオープン予定。とくれば音楽ファンとしては、やはりドビュッシーの音楽が聴きたくなるではないか。
美術館のオープンを前にした11月19日、すみだトリフォニーホールのステージへ登場するのは、ドビュッシー弾きとして高い評価を得ているパスカル・ロジェ。いまやベテランの風格も漂うマエストロが演奏するのは、多彩な色と光が現れては消えるような「前奏曲集第1巻・第2巻」の全24曲だ。「俳句を連想させる」というこの曲集を、1曲1曲丹念に弾き込まれるような演奏で聴けるのは幸福なこと。しかも今回は特別な趣向として、ステージ後方のスクリーンへ北斎の名作が映し出されるという。ロジェ自身も「ハーモニーは色であり、フレーズは風景画のよう」と語り、ドビュッシーと北斎の幸福な出会いを称賛。こんなコンサートを体験したかった! という方は、お聴きのがしなく。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
11/19(土)19:00 すみだトリフォニーホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
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